もうすぐ1年生 父と息子のひらがな練習〈古泉智浩さんの子育て日記〉21

(2021年3月12日付 東京新聞朝刊)

市の施設で漫画を広げるうーちゃん(手前)と妹のぽんこちゃん

「読める」から安心していたら…

 養子の男の子、うーちゃんは4月から小学校です。

 ランドセルが届いた日は、お風呂の時間以外、寝るまでずっと背負いっぱなしでした。小学校へは、ほぼ一本道で歩いて5分くらい。度々グラウンドに遊びに行くので道順はばっちりで、入学を楽しみにしています。これから6年間の小学校生活を楽しいものにしてほしいと切に願っています。

 うーちゃんは、ひらがなもカタカナも読めて、色など簡単な漢字は教えていないのに読んでいます。ちょっとした足し算もできます。これなら勉強も安心だと思っていました。

書き順も持ち方も 修正点だらけ

 先日おばあちゃんの誕生日に、うーちゃんが提案しました。「僕がメッセージを書くから、パパがおばあちゃんの絵を描いて」。なんと心優しい子だと感心して、おばあちゃんの似顔絵を描きました。その横にうーちゃんがメッセージを書きます。

 「おばあちゃん、いつもすまほをかしてくれてありがとう」と書いているのですが、「パパ、『ば』ってなんだっけ?」などと、度々つっかえます。字は読めるけど、書く方がさっぱりでした。

 その上、よく見ると「あ」は「お」の点を斜め左下に伸ばして回っているところにつなげていました。書き順もめちゃくちゃで、「く」「し」は鏡文字です。ペンの持ち方も変で線がぐずぐずです。修正点がありすぎて、このまま小学校に行ったら勉強が嫌いになりそうです。

 うーちゃんは特に努力をせずに褒められるのが大好きで、ボール投げなどでもアドバイスをすると途端にヘソを曲げます。褒めながら教える必要があります。

ヘソを曲げないように教えるには

 100円ショップで、ひらがなの練習帳を2冊買いました。練習帳に薄く書いてある見本をなぞらせます。書き順は番号が振ってあります。ところが、線に力と勢いがなく途中で短くなったところを書き足すので練習になりません。

 うーちゃんに鉛筆をにぎってもらい、僕が上から手を覆うように持って、「あ」を10回書くことにしました。体で覚えさせてその後、自力で書いてもらいます。

 とめ、はね、はらいもこれまで教えておらず、それも力と勢いが必要で、指が運動していないと上手にできません。ヘソを曲げないように上手に書けたら大げさに褒めます。その日は、「あ、い、み、う、ゆ」を練習しただけでへとへとに疲れて終わりにしました。(漫画家)