“カマキリ先生”香川照之さん 昆虫に学んだ「精神的な飢餓感」の大切さ
子どもの頃、じっと昆虫を見ていると
-子どもの頃から昆虫が好きだったのですか。
東京・世田谷で育ちましたが、子どもの頃は畑や緑もいっぱいあって、いろんな昆虫がいました。じっと見ていると、見られていることを忘れた昆虫が本能で動くようになります。その生物本来の姿を見たいんです。卵で生まれ、親に教わるわけでもないのに、親と同じように行動するようになる本能って崇高だなと。
-どんな思いで昆虫のことを発信していますか。
自然の中で昆虫がどう生きているかを目にすることで、人間の本来の生活の在り方のヒントをたくさん得られると思うんです。体が小さくて長く生きられないから、というだけで昆虫をないがしろにするのは、大いなる生態系を無視した発想です。昆虫たちが今日も昨日と同じようにいてくれること、それが地球環境のバロメーターになっていると感じながら、昆虫と向き合ってほしいですね。
精神的な飢えが、生き方の美しさに…
-なぜ「カマキリ先生」なのですか。
カマキリが一番好きだからです。子どもの頃、オオカマキリをずっと飼っていました。ワンシーズンを通して生きるし、目の前の物を捕食し続ける残酷な感じもエキサイティングで、「生きている」ということを感じさせてくれました。
カマキリは動体視力も高く、野性の感覚鋭く餌を食べるけれど、飼育していると、自然の中での摂取量よりも餌を与えすぎちゃうこともあり、だんだんと能力が鈍ってくるんです。そういう傾向を見ながら、生き物は常に飢えてないと美しくないんだな、と子ども心に思いました。
昆虫からは、ストイックに生きることや目的達成のためにあきらめない心を学びました。人間に置き換えると、精神的な飢餓感が大事だなと。裕福になったり、何もしなくても仕事が回ったりしても、精神的な飢えを感じているかどうかが、その人の生き方の本質的な美しさにつながると思うんです。
「昆虫すごいぜ!図鑑」は地域に注目
-コロナ禍で我慢することの多い子どもたちに届けたい、と本を出しました。
移動がしにくい今、あらためて身近な環境に愛着を持ってもらいたいと思いました。各県ごとの図鑑を作りたいくらいですが難しいので、首都圏や関西など6つの地域ごとの「着せ替えブックカバー」(書店購入者への数量限定プレゼント)を作り、各県の虫を独断と偏見で認定しました。
チョウチョを捕まえるだけでも、網に入った時の喜びは子どもなら誰でも感じられると思います。セミを手に持ってビーッと鳴く時の振動を感じるだけでも、経験しないよりはしていた方がいいとも確信します。そこから命の不思議を感じ、自分で確かめてみようという気持ちになったらうれしいですね。
コメント