小中学生の五輪・パラ観戦、見直し広がる 世田谷区長「大変困難で厳しい」 神奈川県では2市4町が中止
保坂区長「子どもの安全を第一に考える」
世田谷区教育委員会によると、区立幼稚園(8園)や小中学校(90校)の5~15歳約5万人が、東京都教委に観戦を申し込んでいる。各園や学校によって観戦種目が異なるため、区をまたいで移動する場合もある。都教委は公共交通機関を利用するよう求めている。
この日、一般質問で風間穣議員(立憲民主)がただしたのに対し、保坂区長は「準備段階では、またとない機会だと思っていたが、現在は子供の安全を第一に考えようとしている」と強調。
公共交通機関を使うリスク 熱中症も心配
コロナの第4波で子供の感染拡大が起きやすい英国・インド株が猛威をふるっていることや、公共交通機関を使うこと、熱中症の心配を理由に挙げ「子供の安全第一、リスクの最小化を最優先していく」と述べた。
小中学生らを観戦させるかどうかは、区教委が今後、区長部局や各校長らの意見を聞き、方針を決める。
神奈川県内で平塚市、南足柄市、中井町、松田町、山北町、開成町が中止決定
「学校観戦プログラム」チケットが低額に
競技会場のある自治体の児童や生徒が現地観戦する「学校連携観戦プログラム」は、大会組織委員会が、五輪ならチケットを1枚2020円と通常より低額で提供する。神奈川県教委などが補助するため、子どもはさらに低い価格で入手できる。県教委によると、県内では8万8000枚の申し込みがあった。
ただ、新型コロナが収束の兆しが見えない中、14日現在で、平塚、南足柄、中井、松田、山北、開成の2市4町教委がプログラムの中止を決めた。
平塚市「校外学習を控える方針と矛盾」
このうち平塚市教委は、横浜市で開かれるサッカーなどを小中学生らが観戦する予定で540人分を確保していた。「移動で感染リスクが高まる。感染拡大を受け、学校に市外での校外学習を控えるよう呼び掛けており、実施はその方針にも矛盾する」と話す。
町内の一部が五輪の自転車ロードレースのコースになっている山北町教委は、ゴール会場の富士スピードウェイ(静岡県小山町)などのチケット510枚を予約していたが「変異株の増加が見込まれる上、会場が密状態になる恐れもある。子どもたちの安全を最優先した」と説明する。
「一生に一度の機会」相模原市は実施へ
一方、今のところ実施方針を変えていない自治体もある。1800人分のチケットを確保した相模原市教委は「子どもには一生に一度の機会。教育効果も高い。実施する方向で調整している」と話す。ただ、感染対策には気を使う。中学生は保護者同伴の上、分散して公共交通機関で移動させる方針。「少人数で移動してもらうなど、感染リスクを低減させていきたい」
また、川崎市は15日、市立中学、高校計9校の12の部活から420人分の観戦希望を受けていたが、感染拡大の懸念などから、190人分のキャンセルが出たと発表した。
神奈川県教委は、市町村教委に対し、キャンセルする場合は23日までに報告するよう求めている。
「児童生徒の観戦中止を」元教員らの市民団体が要請書
神奈川県内在住の元教員らでつくる団体「改憲・戦争阻止!大行進神奈川」などは15日、児童生徒が東京五輪・パラリンピックを現地観戦する「学校連携観戦プログラム」の中止を求める要請書を県教育委員会に提出した。
要請書では中止を求める理由に「子どもの感染リスクを下げる」「引率する教職員の負担軽減」「医療崩壊を防ぐ」など5点を挙げた。県教委が中止を決断することで、市町村教委が倣うことを期待したという。
品川孝司事務局長は「五輪自体をやめてほしいという声も増えている。外国人の観客がいないから、国際交流という意義も薄れている」と話した。
同団体は近く、メンバーが住む横浜、相模原、横須賀の各市教委にも同じ要請書を提出する。
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