小学生向けの野菜作り動画を高校生が制作 ミニトマトの苗植え、畑の耕し方…字幕はひらがな
筑波大付属坂戸高・貫井さんの卒業研究
「今日は僕と一緒にトマトの鉢植えをしていきます」。パソコンの画面越しに貫井さんが小学生に優しく語りかける。動画には主に平仮名で字幕を付け、作業は自ら実演。常に笑顔なのは「農作業が楽しくて自然に笑ってしまうから」だという。
「農業愛」の原点は、高校2年の授業で取り組んだ冬野菜の栽培。学校の畑で5カ月かけて大根やハクサイなどを種から育てた。人生初の農作業で畝作りなどに悪戦苦闘したが、その分、収穫した野菜を食べた時は「大変な思いをしたからこそのおいしさが感じられた」と忘れられない体験となった。
子どもが好きな食べ物の中で、野菜の人気はいまひとつ。自分が小学生のころを振り返ると、野菜嫌いの同級生が多かった。そこで卒業研究のテーマを「食育支援」に決めた。新型コロナウイルスの影響で対面でのやりとりは難しいため、動画で野菜作りを説明。簡単な栽培を通じて「野菜を育てる人がいるありがたみ」を感じてもらうのが狙いだ。
市内の小学校で活用 児童とやりとりも
動画制作では同校の渋木陽介教諭(45)が撮影を手伝うが、それ以外のナレーションや編集などは貫井さんが受験勉強の合間を縫って一人でしている。4月に始めてミニトマトやサツマイモの苗植え、畑の耕し方などの動画四本が完成。子どもたちに興味を持ってもらうよう「トマトの茎に見える部分は、実は葉っぱ」などの豆知識も盛り込んだ。
市内の坂戸小学校の協力が得られ、動画は2年生と5年生の授業で活用してもらうことに。動画は長くても4分ほどで説明が分かりやすく、実際の栽培体験で子どもたちは手際良く作業しているという。同小の教諭は「児童の集中力を考え、要点を短くまとめている。理解度も高まっている」と感心する。
動画では一方的に伝えるだけになるため、今後は質問や成長記録をメールなどで送ってもらい、相互のやりとりで理解をより深めてもらうことを検討している。貫井さん自身も取り組みを通じて農業や教育への関心が高まったといい、将来の夢は関連する仕事に就くこと。「大学で食農教育の勉強を続けたい」と目を輝かせている。