<記者の視点>生理でプール見学の女子に筋トレさせるなんて 人権尊重の観点含めた性教育が必要

(2021年9月3日付 東京新聞朝刊)
 「中学生の娘が生理で水泳の授業を見学すると、プールサイドで腕立て伏せ、腹筋、背筋各50回を指示される」。読者の投稿を読み、個人が尊重されない教育現場の実情に暗たんたる思いを抱いた。

読者部の小形佳奈記者

腕立て、腹筋、背筋各50回 プール掃除も

 投稿者の長女で中学1年の女子生徒は「経血量が多めで、友だちと比べて、頭痛や腹痛がひどい」と生理中の症状を説明する。プール授業の見学理由を「生理中」としても、水着を忘れた人と同様に筋トレを課され「授業で成績が付けられないから」とプール掃除もさせられるという。

 記者も中高生時代は生理痛がひどかった。経血量が多い日はプールの授業を見学したが、運動させられた記憶はない。女子生徒が受けたという指導に驚きと怒りを覚えた。

 女子生徒が暮らす自治体の教育委員会は、管内の全中学校から聞き取りをしたが、体育の授業で「体調不良の生徒に筋トレをさせた学校はなかった」という。そして「学校の返答と保護者の訴えがかみ合っていない。真摯(しんし)に受け止めるよう、各校に伝えた」と付け加えた。

「成績に響く」と、体調不良を言い出せず

 女子生徒は「他の子は生理中でも動けている。体育の成績に響く」と感じ、「体調不良」とは言い出しにくいと訴える。学校側で筋トレをするのがつらいほど生理中の症状が重い生徒がいることに気付いていない可能性がある。

 検索サイトで「生理 水泳」と打ち込むと、次の変換候補に「ナプキン」「休めない」「何日目でプール入れる」が上位に出てきた。水着にナプキンを当てて入る? 休みたいのに…。悩む姿が思い浮かぶ。SNS上では「見学者は筋トレ」「校庭を走らされた」といった経験談が並ぶ。

 思春期外来の診療に携わる産婦人科医伊藤加奈子さんは「生理中でも、プールに入りたい人は入っていい。衛生的にも問題はない」。一方、生理中の体調はそれぞれで「体調が悪いのに筋トレをさせたとしたら体罰に当たるのではないか。つらくても頑張る人が評価される価値観も変えなければ」と指摘する。

大人の知識不足から生じる配慮のない指導

 さらに、学校での包括的な性教育や見守る大人の知識が不十分なため、生理中の個々の体調に配慮が及ばなかったり、「生理だからプールに入ってはいけない」といった間違った解釈がされたりしている、とみる。そして、生理痛が重い、経血量が多いといった症状は「我慢せず、婦人科で相談を」と呼びかける。

 伊藤さんの指摘する通り、配慮不足の指導がされるのは、教員自身も生理についてよく知らないからだろう。ジェンダー平等や性の多様性など、人権尊重の観点も含めた性教育が必要だ。

 もう一点。女子生徒は「成績に響く」から言いたいことを言えないとしている。遠慮なく申し出られる雰囲気づくり、リポート提出で補うなど、個々の状況に沿った対応があれば、より安心して授業に臨めるのではないだろうか。 

コメント

  • 私が中学(私立)の時も、プールを休む時に保護者連絡を書き忘れた人達は筋トレさせられてました。 私は生理痛が激痛で体育を見学してる時は片付けは見学者にさせられたので、激痛がトラウマです。 女
     女性 30代 
  • 医者です。 わたしが水泳が必修の小中高生だった頃からもう40年以上も経過してるけど、発想が激しく後退してる事に驚きを禁じ得ない。 何回も休みたくなくて生理終了直後に水泳参加したら、平素と比べて
    の 女性 60代