人一倍敏感な子ども「HSC」の思慮深い資質を伸ばすには 「早く!」ではなく「焦らないで大丈夫」
先生の理不尽な言動でじんましんが…
「手のかからない子だったので、下の子にかまけて寄り添ってやれなかった」。千葉県に住む看護師の女性(43)は5年前を振り返る。長男は中学で野球部に入った。経験者で、部員も少ないこともあり、いきなりレギュラーに。ただ顧問の教師が同学年の部員をけなす言動を見聞きするのがつらく感じた。
1年の夏から「先生の態度が嫌」と不登校に。無理に登校させると、じんましんを発症。学校にも訴えたが顧問は態度を変えず、無力感を覚えていた頃、講演会や本でHSCを知った。「理不尽なことに強く反応し、傷ついた長男はまさにそれ」。その後は、長男をより理解でき、本人の言い分を信頼して意見を尊重するなどして味方に徹しているという。
学校では「消極的」と評価されにくい
HSCは、米国の心理学者が1996年に著書で提唱した概念。大人は、HSP(Highly Sensitive Person=ハイリー・センシティブ・パーソン)と呼ぶ。杉本さんによると、HSCは思慮深く、協調性や共感力も高いが、他の子には何でもない刺激でもストレスに感じやすい。杉本さんは学校や親にHSCを理解してもらうため、「一生幸せなHSCの育て方」(時事通信社)を出版した。
学校では、快活で積極的な子が評価されやすく、HSCに多い慎重で控えめな子は評価されにくい傾向がある。「大人になれば、気配りできて仕事も丁寧な社会人、思慮深さで信頼されるリーダー、わずかな変化も見逃さない研究者にもなれる素晴らしい気質。『消極的』とか『我慢が足りない』などと、つぶされてしまうのは社会全体にとっても損失になる」
不安あおると逆効果 穏やかな環境を
HSCは「迷惑をかけたくない」と強く思い、「ちゃんとしなきゃ」と緊張しつつ学校生活を送っている。「親や教師らが『早く!』『もっと頑張って』とあおると不安になるだけで逆効果。『焦らないで大丈夫』『失敗してもいいよ』という穏やかな環境下で経験を積ませれば、どんどん伸びる」
杉本さんは「HSCの子が求めているのは、穏やかでモラルが保たれた環境。それは他の子にも心地よく、学校全体にとっても良いはずです」と話す。
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