人一倍敏感な子ども「HSC」の思慮深い資質を伸ばすには 「早く!」ではなく「焦らないで大丈夫」

(2021年12月14日付 東京新聞朝刊)
 人の気持ちやさまざまな刺激に人一倍敏感で、家庭や学校でストレスや疲れを感じやすい子どもがいる。病気や障害でなく、生まれ持った気質ととらえ、「HSC」(Highly Sensitive Child=ハイリー・センシティブ・チャイルド)と呼ばれる。千葉市でフリースクールを営む公認心理師の杉本景子さん(43)は親や教師に、「苦しんでいる子を無理に変えようとせず、取り巻く環境を見直してほしい」と呼び掛ける。

表 HSCの4つの基準 何事も思慮深く考える、過剰に刺激を受けやすい、共感力が高い、観察力や洞察力に優れる

先生の理不尽な言動でじんましんが…

 「手のかからない子だったので、下の子にかまけて寄り添ってやれなかった」。千葉県に住む看護師の女性(43)は5年前を振り返る。長男は中学で野球部に入った。経験者で、部員も少ないこともあり、いきなりレギュラーに。ただ顧問の教師が同学年の部員をけなす言動を見聞きするのがつらく感じた。

 1年の夏から「先生の態度が嫌」と不登校に。無理に登校させると、じんましんを発症。学校にも訴えたが顧問は態度を変えず、無力感を覚えていた頃、講演会や本でHSCを知った。「理不尽なことに強く反応し、傷ついた長男はまさにそれ」。その後は、長男をより理解でき、本人の言い分を信頼して意見を尊重するなどして味方に徹しているという。

学校では「消極的」と評価されにくい

 HSCは、米国の心理学者が1996年に著書で提唱した概念。大人は、HSP(Highly Sensitive Person=ハイリー・センシティブ・パーソン)と呼ぶ。杉本さんによると、HSCは思慮深く、協調性や共感力も高いが、他の子には何でもない刺激でもストレスに感じやすい。杉本さんは学校や親にHSCを理解してもらうため、「一生幸せなHSCの育て方」(時事通信社)を出版した。

写真

公認心理師の杉本景子さん

「一生幸せなHSCの育て方」の表紙

 学校では、快活で積極的な子が評価されやすく、HSCに多い慎重で控えめな子は評価されにくい傾向がある。「大人になれば、気配りできて仕事も丁寧な社会人、思慮深さで信頼されるリーダー、わずかな変化も見逃さない研究者にもなれる素晴らしい気質。『消極的』とか『我慢が足りない』などと、つぶされてしまうのは社会全体にとっても損失になる」

不安あおると逆効果 穏やかな環境を

 HSCは「迷惑をかけたくない」と強く思い、「ちゃんとしなきゃ」と緊張しつつ学校生活を送っている。「親や教師らが『早く!』『もっと頑張って』とあおると不安になるだけで逆効果。『焦らないで大丈夫』『失敗してもいいよ』という穏やかな環境下で経験を積ませれば、どんどん伸びる」

 杉本さんは「HSCの子が求めているのは、穏やかでモラルが保たれた環境。それは他の子にも心地よく、学校全体にとっても良いはずです」と話す。

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すくすくボイス

  • あくび says:

    娘がHSCです。
    幼稚園から、先生や友達が困っているのを自分と重ねて泣く事もあり、考えたらあの時からだったんだ!と2年前から本を探して読んでいました。小学校の担任の先生もあまりご存知なくて、私から話しています。かかりつけの小児科でも知らなかったので、もう少し広まって欲しいと感じています。
    今の所、小学校のクラスでは、担任の先生が変わるたびにクラスに話してくれていますが、高学年、中学校と進学するので気掛かりです。 自宅以外は、ヘッドフォンで1日生活し、体育は、イヤフォンに変えています。高校も普通科にするか、HSCの専門校にするか、フリースクールにするか、誰にも相談出来ずに来ています。今度、メールしてみようかな・・・

    あくび 女性 40代
  • リハル says:

    うちの子もそうです。HSPもあります。国語の授業で戦争の悲しい話の単元だと一日中泣いてるような子です。生まれた時から他と違ったので、「ああ、この子は地球初心者なんだな」と思うようになりました。地球の流儀に慣れなくて戸惑っていると感じたからです。外国人に接するような感じで「慣れなかったら慣れなくていいから」と言うスタンスでやって行くと子どもも落ち着いて来ました。中一の時、不登校になりましたが、中2からは越境通学させてもらい、全校40人の小規模校で今は楽しく学校に行けるようになりました。自分も「地球に来たのは何か意味がある。だから少しずつ慣れて行けばいい」と思っているそうです。

    リハル 女性 40代
  • 夜間飛行 says:

    HSPに加え、うつ病、数年前に wais iii で自閉スペクトラム症と診断されました。
    四国の山奥の全校生徒10名の牧歌的な小学校でしたが、昭和ひと桁生まれの厳しい先生、わんぱくな同輩たちに馴染めず完全に浮きまくっていました。今風に言うと「すみっこぐらし」のような子どもで、通学路の脇に寒い日の朝、いつも立っている山中の霜柱にあいさつするタイプでした。

    この分類にかなり当てはまっています。毛糸の服は着られず、周りが子どもじみて見えたり、妹が泣いているのにもらい泣きしたり、かと思えば四捨五入の勉強をする前から「先生、真ん中の『5』はどうするんですか?」と聞いて「今から話します」と言われたり。エピソードがいっぱいすぎです。

    夜間飛行 男性 40代
  • 匿名 says:

    友人がHSCです。服のタグはチクチクするからと全部取り、ウールは全部ダメ。誹謗中傷を見ると気が滅入るからとSNSはやらず、電車内の物音や空気の匂い?が気になって気持ち悪くなってしまうほど。ただ、頭のキレと言葉のセンスは抜群で、決して他人を嘲笑しない心優しい友人です。

    ただ、親御さんは子育てに相当悩まれたようですし、友人自身も就活などで苦しい目にあったようです。結局、彼は20代で大学の専任教員になりました。

    もちろん、HSCだから全員優秀というわけではないでしょう。ただ、友人のような人が「神経質」「メンタルが弱い」「使えない」と片付けられてしまうのは、社会の大きな損失だと思います。HSCという性質があるということが、もっと広く知られて欲しいと思います。

     男性 20代
  • 匿名 says:

    自分もHSCだったと思う。今はだいぶ鈍感になったが。もっと早く知ることができたらもう少し楽だったかも。

  • 匿名 says:

    「ノルウェイの森」の小林緑さんもかな? (ちがうか)

     無回答 70代以上
  • 匿名 says:

    AIがもっと浸透する時代になれば、彼ら(彼女ら)が活躍しやすくなると思う
    HSCは大器晩成型かも

     無回答 60代
  • 匿名 says:

    才能の塊じゃん

  • 匿名 says:

    才能がある子が多いのでは

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