運動会の前日「パパ、何位になってほしい?」〈古泉智浩さんの子育て日記〉33
運動会「誰も見に来ないでください」
小学2年生の養子・うーちゃんの小学校で運動会がありました。コロナ禍が収まらず、今年もコンパクト開催で午前中のみでした。
うーちゃんは運動会の練習で、50m走が6人中1位だったとうれしそうに話していました。保育園の時は鬼ごっこで「僕はいつまでも鬼なんだ」と語っていたことを顧みると、本当に安心。つらい学校生活を送る要素を一つでもなくせてよかった。
ところが、学校から配布された運動会の案内には、うーちゃんから一言、「50m走をがんばる。誰も見に来ないでください」とありました。当然、見に行かないわけにはいきません。
その頃、50m走の話をしなくなっていたので、その後の練習で順位が下がっていたのかもしれません。運動会の前日、「パパ、僕に何位になってほしい?」と聞かれました。「何位でも頑張って走ればいいんだよ。順位なんか関係ないよ」と言うと、うーちゃんは曇った表情をしていました。
さて本番 僅差で順位が分からない
いよいよ運動会当日。各家族、2人までの応援が許されました。みんなマスク姿なので、写真を撮ってもあまり面白くありません。うーちゃんの種目は50メートル走とダンシング玉入れの2つです。
50メートル走は6人、赤組・白組とも3人ずつ走ります。うーちゃんは白組です。スタートの号砲が鳴りました。うーちゃんは第2コースを走ってあっという間にゴール。しかし、みんな僅差で順位がよく分かりません。係の上級生がうーちゃんを3着の列に並ばせました。
3着なら立派なものではないですか。1位の方がうれしいだろうけど、保育園の時はビリだったので十分です。うーちゃんは1位じゃないとかっこ悪いと思っているのでしょうか。
その後競技は進んで、最後は5年生と6年生の全体リレーでした。両学年、全員参加のリレーです。中には明らかに足が遅い子がいて、抜かされてしまいます。僕自身そんなタイプだったので、見ていたら心が苦しくなってきました。声を出して応援してはいけないので、頑張れと強く念波を送りました。
足の速い子はストライドが長くてかっこよくて、それはそれで美しくて感動して涙が出ました。いろいろな感情が入り乱れていましたが、みんなの頑張る姿が見られて素晴らしい運動会でした。(漫画家)
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