子どもの1型糖尿病とは 生活習慣は無関係、血糖値管理に園や学校のサポートを
喉が渇き、トイレが近い…まさか
「まさかそんな病気があると思わなかった」。神奈川県横須賀市の女性(35)は、小学1年生の長男(6つ)が約2年前、1型糖尿病と診断された時のことを振り返る。喉の渇きをしょっちゅう訴えたり、頻繁にトイレに行きたがったりすることが気になっていたが、病気とは結びつかなかった。親族が集まる場でいつもなら大はしゃぎするはずの長男がボーッとして元気がなかったため、周囲の勧めで病院を受診した。
1型糖尿病は、免疫反応の異常で膵臓(すいぞう)の細胞が破壊され、インスリンがほとんど出なくなる病気だ。中高年で発症する2型糖尿病とは異なり、生活習慣などは関係がない。典型的な症状は喉の渇きや頻尿、急激な体重減少などで、発症のピークは男子で13歳、女子で10歳。国内の患者は10万~14万人と推定され、糖尿病全体の約5%に当たる。
インスリン療法 予期せぬ低血糖も
治療の基本は、注射や、持続的に注入するポンプでインスリンを補い、血糖の上昇を抑えること。だが、血糖は、食事で取った炭水化物の量や前後の運動量などの影響を受ける。子どもの1型糖尿病の治療に詳しい「あおいクリニック」(東京)の医師恩田美湖(よしこ)さん(40)は「子どもは食事量や運動量などの行動が大人よりも一定せず、予測しにくいため、予期せぬ血糖の変動が多く、コントロールが難しい」と語る。
特に注意が必要なのは、投与するインスリン量が多過ぎて、低血糖になることだ。「軽症のうちは、ジュースやあめなどの補食で対応できるが、気づくのが遅れると、けいれんや意識障害を起こすこともある」と恩田さん。「しんどい」「疲れた」といった訴えが低血糖による場合も多く、サインを見逃さないことが大切で、見守る保護者らの負担は大きい。
皮下センサーで変動を遠隔チェック
ここ数年は、腹部などの皮下に極細の針が付いたセンサーを挿入し、血糖のリアルタイムの変動を遠隔でも見られる測定器が、国内に相次いで登場。冒頭の女性も、2歳以上の子が使える測定器「デクスコムG6」で学校にいる長男の血糖値をチェックしている。血糖値の急な変化も通知されるため、恩田さんは「危険な低血糖状態を未然に防ぐことができ、子どもの血糖管理に有効」と話す。
それでも、ポンプで投与するインスリン量の調整や、血糖の大きな変動に対応するため、女性は1日3回ほど学校へ行く必要がある。「医療行為ができる看護師を置くなど、どの学校でも病気に対応してもらえる環境になれば」と願う。
恩田さんは「適切な管理や治療で、ほかの子と同じような生活を送ることができる。園や学校の人たちが病気を理解し、変調を気にかけるなどサポートが欠かせない」と指摘する。