災害避難用「段ボールドーム」高校生が開発しました 撥水加工で屋外でもOK
樋口聡 (2022年12月9日付 東京新聞朝刊)
群馬県立安中総合学園高校の生徒らが、災害発生の際、避難者向け住居などとして活用できる「災害時用段ボールドーム」の開発を進めている。キャベツなど農作物を入れるために撥水(はっすい)加工を施した段ボールを用い、屋外での使用も可能だ。
避難所でプライバシーを確保
ドームは直径4メートル、高さ2メートル。三角や台形にカットされた段ボールのパーツ45枚を組み合わせて自立させる構造だ。パーツ同士は車の内装固定に使われる樹脂製リベットでつなぎ合わせる。作業に慣れた5人がいれば50分ほどで完成する。水をはじく段ボールは、高崎市の包装容器総合メーカー「マタイ紙工」が無償で協力した。
広さは小ぶりのベッド2つが余裕を持って入る。換気と明かり取りを兼ねた窓を設け、機能性も高めた。
従来、避難所となる体育館などでのプライバシー確保が課題だった。ドームでは着替えや授乳、診療の場としても安心して使えるよう「個室型」になるよう配慮した。
実用化の課題は組み立て時間
安中総合学園高校で災害用の段ボール製のドームの研究が始まったのは3年前。情報電子系列の生徒たちが藤井進教諭(58)の指導を受けながら、総合研究科目の授業の一環として手がけてきた。
初期に試作した段ボールドームは、三角形のみのパーツを組み合わせ、やや角張った構造。組み立ては容易だが、出入り口や窓を空けると強度が落ちる欠点があった。
今回発表した試作品は強度はあるが、組み立て時間が課題。安中市役所でドームを組み立てた3年の青木滉昂(ひろたか)さん(18)は「窓や入り口、雨漏り対策、女性や高齢者でも簡単に組み立てられるものに改良していきたい」と話す。藤井教諭は「5人が10分間で組み立てられるようにし、実用化も目指したい」としている。
生徒とともに組み立て作業に取り組んだ岩井均市長は「実用化されれば導入を検討したい」と期待を寄せた。