津波が来る海へと車が向かった理由は 震災を経験した元中学生の「語り部」が中学生に伝えたいこと
山本哲正 (2022年12月17日付 東京新聞朝刊)
2011年の東日本大震災で被災した当時の中学生が震災の語り部となり、現在の中学生に震災の怖さなどを伝える「語り部プロジェクト」が、千葉県富津市内の中学校と岩手県釜石市などとをオンラインでつないで行われた。富津シティロータリークラブが「今の子どもたちにも震災の怖さや故郷に住めない思いなどを伝えたい。防災意識の向上に役立ててほしい」と企画した。
富津と釜石をオンラインで結び講演
プロジェクトは13日に実施され、富津中と天羽中の1、2年生計394人が参加。語り部活動をしている釜石市の菊地のどかさん(27)が主に話した。
菊地さんは当時、津波にのみ込まれた釜石東中の3年生。小学生と手をつないで避難したことを振り返りつつ、坂道で子どもたちが上へ向かって避難するのに対し、車の列が下に向かっていた資料写真を紹介。「津波が来ると分かってて、海の方へ子どもを迎えに行こうとする保護者もたくさんいた」と解説した。
「起きる前から家族と話し合って」
「私たちは学校で昔の津波の話、防災の話を聞くこともあった。でも、私たちは大切な家族に『私たちはしっかり避難するから迎えに来ないで』『お父さん、お母さんもちゃんと逃げてね』と言えてなかった」と菊地さんは語る。
「災害時、その瞬間にできることは限られ、起きる前から訓練、備蓄、家族と話し合うことが大切」と訴え、「今日の話も親と話し合ってほしい」と呼び掛けた。
富津中2年の男子生徒は「津波によって一瞬で町がなくなる話は怖かった。災害はいつ起こるか分からないので、避難訓練の1回1回を大切にしたい」と話していた。