知的障害のある子どもに性教育を 元養護教諭がワークシートを書籍化、全国に広がる
性被害に声を上げられない…
「子どもは、性被害にあっても声を上げられないことが多いです」。11月下旬、同校の保護者らに向けて行われた性教育の研修会。高瀬さんは「子どもへの性の教え方に困ったら、気後れせず学校に相談を」と呼びかけた。
大学卒業後、千葉県内の複数の特別支援学校に養護教諭として勤務。寂しさを抱えた子どもが見知らぬ人に近づいて体を触らせる代わりに金銭をもらったり、男の子が異性の胸を触ってしまったりすることがあった。生理用ナプキンをつけていられず、スクールバスの窓から投げ落としてしまう子もいた。「性の知識がないまま卒業してほしくない」との思いで独自の教材を作り、保健指導の際の性教育に力を入れてきた。
重視するのは、家庭との情報共有。「『人前で自分の性器を触らない』と学校で教えても、親が許していたら意味がない。学校で習ったことを家庭に伝え、同じ支援をすることが重要」と訴える。
イラストでわかりやすく説明
2018年、柏特別支援学校に在職中には、同僚や専門家らとともに、授業で使用していた性教育用のワークシートをまとめ、書籍『ワークシートから始める特別支援教育のための性教育』(ジアース教育新社)を出版。障害児向けの性教育の教材は珍しく、現在は全国の特別支援学校や支援学級で使われている。
ワークシートは、言葉での理解にハンディのある知的障害の子向けに、イラストを多く使用。「妊娠したらすぐ出産するわけではないと教えて」など、各項目ごとに家庭に向けたメッセージを盛り込む。性のトラブルに巻き込まれた時の相談相手を生徒が書き出せる一覧表もある。
2020年に退職後も全国を飛び回り、講演や研修会などで、特別支援学校の教員や保護者、福祉施設の職員に性教育の方法を伝えている。「情報化社会の現代は、子どもが性に関する情報に触れることは避けられない。性の知識は、世の中を生きる上でとても大切。繰り返し教えればきっと身に付く」