どうする令和のPTA 地域で食堂、負担軽減、ガイドライン作り…コロナ禍で活動見直し、成功例は?
子どもが地域の人と関わる経験
3月中旬の日曜、名古屋市瑞穂区の陽明小学校の特別活動室から、カレーライスの香りが漂った。PTAや学区連絡協議会によるコミュニティー食堂「フタバックスカフェ」が開かれ、保護者や地域住民が配膳や接客にいそしんでいた。
食堂は昨年4月から月1回、子どもと地域住民の交流などを狙ってオープン。中学生までは無料、高校生は100円、大人は300円でカレーを味わえる。
高齢の夫婦や家族連れ、練習後の野球少年が列をなし、PTAの役員、林百々子さん(40)は次女の咲さん(10)と案内。「先日の交通当番、ありがとうございます」などとあいさつし、咲さんたち児童も住民と会話を弾ませた。「食堂の活動はなくても十分と思う人もいるだろうが、子どもが地域の人と関わる経験はここでしかできない」と林さんは意義を語る。
「特技が役立つなら協力したい」
PTAは、共働き世帯の増加やコロナ禍に加え、入退会が自由な任意団体だという認識も全国に広まりつつあり、転換期にある。存続させる上で大切なのは、活動の意義を確かめ形骸化を防ぐことだ。
陽明小のPTAは2019年から改革に乗り出した。同年に全世帯を対象にしたアンケートで、PTA活動を「自主的でない」とする一方で、「自分の特技が役立つならば協力したい」と答えた世帯が目立ったからだ。
役員は立候補制にし、活動への参加を強制せず、保護者ができる時に取り組むように変更した。それまで役員は強制的に割り当てられ、ある保護者は「選ばれないようにいかに存在感を消すか、下をずっと向いていた」と明かす。
役員や当番への立候補が増えた
全国で一斉休校となった2020年春には、PTAが朝の会の時間に校長のあいさつを配信。定時に起きられなくなるなど、子どもの生活の乱れを心配した保護者の声に応えた。さらに、登下校時の見回りなどの活動を見直し、メールで危険な場所を届け出るように負担を軽減。食堂は、通学路の安全面について学区連絡協議会に相談し、連携が密になったことで実現した。
改革後は活動の重要性を認め、役員や当番に立候補する保護者が増加。PTA会長の水野孝一さん(46)は「世の中の変化に合わせ、私たちのような組織が学校や地域の隙間に入り子どもや地域の将来を支えなければ。PTAの活動意義はなくなったわけではない」と力を込める。
新たな「ガイドライン」を公開
東京都板橋区の弥生小のPTAでは、コロナを機に連絡手段に無料通信アプリ「LINE」を取り入れた。従来は毎週土曜に集まり、活動方針を話し合ったが、負担を減らすように変えた。会長の喜屋武(きゃん)良枝さん(41)は「やりたい人が、やりたい時に、やりたいことをできる組織を目指したい」と話す。
名古屋市立小中学校PTA協議会の2020年の調査では、回答した市立小中PTAの4割超が活動の見直しや負担軽減を図りたいとした。同会は今年、時代に合わせた活動を支援するガイドラインを作りホームページで公開した。
コロナ禍の前から、地元の吹上小でPTAを改革してきた協議会の下方丈司副会長(53)は「PTAはまず学校や地域と子どものことを話し合うことが大切。課題を共有し、解決のために何ができるか考えていくといい」と勧める。
コメント