PTAに「外注」の波 旅行会社による代行、企業とつながるマッチング… 親に押し付けられてきた負担を可視化

山田祐一郎 (2022年10月23日付 東京新聞朝刊)
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近畿日本ツーリストが始めたPTA業務のアウトソーシングサービスのサイト

 PTAの業務を代行します-。旅行会社「近畿日本ツーリスト」が8月、そんなアウトソーシングサービスを始めた。既に全国から問い合わせが寄せられているという。こうした業務委託は、担い手不足や役員の負担などが取り沙汰されるPTAの課題解決のカギになるか。

広報誌、ホームページ、イベント運営

 近畿日本ツーリストによる代行サービスは、

  • 広報誌の印刷・デザイン
  • PTA専用ホームページ作成
  • 行事の受付、事務作業への人材派遣
  • イベントの企画・運営
  • 講演会、特別授業の実施

-だ。全国にあるグループ会社が業務を請け負う。広報誌作成を例に挙げると、30ページ300部で参考価格が20万7000円(税別)となる。

 「これまで強みとしてきた修学旅行で多くの学校と付き合いがある。教育現場の課題を外注してもらい、解消したいと考えた」と同社の担当者は説明する。

 これまでに関東や関西のPTA団体から、約60件の問い合わせが寄せられ、近く実施予定の業務もある。「特にイベント関係での相談が多い」と担当者。「ホームページや資料作成は、保護者によって技術に差があったりするが、これらのサービスをワンストップで提供できる」と今後の利用増に期待を掛ける。

マッチング「PTA’S」680団体が登録

 近畿日本ツーリストの試みに先駆け、業務の外注先を探すPTAとサービスを提供する企業をつなぐマッチングサービスが活用されているケースもある。

 「PTA’S(ピータス)」は、2020年11月に始まったサービスで、現在680以上のPTAと約50の企業が登録している。ピータスを運営する合同会社「さかせる」代表社員の増島佐和子さん(51)は、新型コロナウイルスの感染拡大の前後に公立小学校でPTA副会長を経験。「誰もが負担なく参加でき、安定したPTAにするには、リーダーシップやスキルに頼るのではなく、仕組みが必要」と説明する。

 当初は登録するPTAが増えず、開始1年後は200団体だったが、その後に認知されて急激に増加した。PTA全般に関する相談なども受けており、「PTA業務を丸ごと外注したい」との声もあった。

 「子どもが通っている学校のための活動なので、保護者が携わることに意味がある。保護者が敬遠したり、母親に負担が偏る現状を前向きに変えられるようなサービスを目指している」と増島さんは話す。

 PTAが抱える悩みは何なのか。ビジネス向けの「LINE」サービスを提供するワークスモバイルジャパンがPTA役員経験者を対象に行ったアンケートでは、PTA活動で非効率だと思うことについて、48%が「会議のために学校に行くこと」と回答。「会員への連絡・通達」(35.9%)「資料の作成・印刷」(35.6%)との声が続いた。PTAが業務外注に熱い視線を送るのも納得できる。

費用に対する保護者の同意が課題に

 任意参加が基本とされるPTAだが、実質的に強制となっている実態や役員のなり手不足が問題となっている。業務外注の流れは改革につながるのか。

 PTA問題に詳しい文化学園大の加藤薫教授(日本文化論)は「業務委託によって、実質的に母親に押し付けられてきた仕事の負担量が、代行料として可視化できる」と説明する。

 業務外注がもたらす影響を「そもそもの負担の是非や、コストに見合う効果があるのかを客観的に評価することにつながる」と評した一方、「費用が生じることに保護者の同意を得るという新たな問題も生じる」と指摘する。

 その上で現状の問題に向き合う必要性を強調する。「PTAは本来、誰が何をするものなのか、根本的に見直す段階を迎えている」

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