PTA非加入は「ずるい」のか 入っていないのに退会届を求められ…想像以上の圧力「脅しみたい」 全国で相談増加の背景は

山田祐一郎 (2023年11月6日付 東京新聞朝刊)

 任意加入が基本のPTA。役員の負担の重さやなり手不足などを理由に実質的に「自動加入」となっているケースがある。10月、PTA非加入の保護者にPTAから「退会届」の提出を求める文書が届いた。「PTAに加入しなかったら想像以上の圧力を掛けられた」という保護者の訴えからPTAのあり方を考える。 

保護者に届いたPTAの退会届の提出を求める文書

入学時「加入しない」と伝えたのに

 関東在住の30代の男性は、今年4月に長男が小学校に入学した直後、学校でPTAへの加入届が渡された。男性は「PTAの活動に意義を感じることができなかった」ため、連絡帳に加入しない意思を書いて学校を通じて伝えた。学校やPTAからは、特に反応がなかったが、10月に入ってPTAから「退会届」の提出を求める文書が届いた。

 「加入していないのに退会というのはどういうことなのか」。文書には、退会届を受理するまでは退会完了にはならず、PTA役員の対象外にならないことや、退会すると卒業式などの式典で児童への記念品がないこと、行事に参加できないことなどが記載されていた。男性は「入学の段階で非加入を選択できない時点で疑問を感じたが、まるで脅しみたいな文章」と不信感を募らせる。

Xで賛否「親のエゴ」「記念品が…」

 一連の経緯をX(旧ツイッター)に投稿したところ、共感するメッセージのほか「親のエゴ」「非加入で記念品がもらえないのは当然」など賛否が分かれた。

 男性は元教員。自身の経験からPTAの存在意義に疑問を感じていた。「教員時代にPTAに抱いていたのは、みんながやりたくないのにやらざるを得ずにやっているという印象。学校側も自由に使えるお金のために必要という認識だった」と明かす。

政府見解は「入退会は保護者の自由」

 PTAの入退会は任意が基本だ。今年3月、参院予算委員会で岸田文雄首相と永岡桂子文部科学相(当時)が「任意団体であり、入退会は保護者の自由」との見解を改めて示した。卒業記念品の配布などについても「子どもが嫌な思いをしないようPTAと学校が連携するのが適切」とした。

 男性は「岸田首相の答弁があったこともあり、現場の対応も変わったのかなと思っていたが、違った」と残念がる。「今後子どもへの不利益や親への圧力がどれほどあるのか気になる。5、6年生になった時にどのような影響があるのか」と不安を口にする。

退会届の要求は「実質的な強制加入」

 「同様のトラブルに関する相談は全国から多く寄せられている」と話すのは後藤富和弁護士。2017年から2年間、福岡市立中学校のPTA会長を務めたことがある後藤さんは「加入するかどうかについてはPTAや学校の了承は必要ない。退会届が受理されなければ認められないというのは、実質的な強制加入に当たる」と指摘する。記念品などで非加入世帯に差をつけることについても「本来、その予算が学校になければやらなければいい。PTAが子どもの差別や分断を生む行為をするべきではない」と話す。

 加入を強いる背景について「役員を務める保護者が何も知らないまま前例踏襲で問題点すら把握できていない。根底にはPTAにかかわることへの苦労があり、非加入世帯が『ずるい』と見られてしまうことがある」と話す。

意思確認が広がる一方で、二極化も

 PTA問題に詳しいジャーナリストの大塚玲子さんは「加入意思の確認の徹底が広がる一方で、加入は義務で全員加入が当然という思い込みも残っており、二極化が進んでいる」と説明する。時代に合わせた意識変革が求められる。

 大塚さんはこう訴える。「保護者に加入や活動を強制する根拠は何もない。入りたい人が入り、活動したい人が活動する組織になることが大前提。その上でいまの時代に必要な活動をしていくべきだ」

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年11月6日

コメント

  • 地域PTAの密な関係性の地域に居住しています。地区によって在籍児童にも偏りがあります。小学校入学後、私は妊娠中でしたが、翌年にPTA傘下の役員に必然的にならざるえなかった。 生後1年未満の子供を
    ノンストレス 女性 40代 
  • 記事の中で大塚氏が「保護者に加入や活動を強制する根拠は何もない。入りたい人が入り、活動したい人が活動する組織になることが大前提。その上でいまの時代に必要な活動をしていくべきだ」と述べている。これが全て
    元教員 --- ---