横浜の朝鮮学校が補助金凍結で窮地 雨漏り、耐震不足…築58年の校舎が改修できない 募金を受付中
教科書をめぐり2016年に補助金停止
神奈川朝鮮中高級学校は在日コリアンの生徒に朝鮮民族の言語と文化を重んじ、民族のアイデンティティーを育む教育を行っている。現在は日本で生まれ育った4世を中心に110人が通学し、国籍は8割が韓国で日本国籍の生徒もいる。
築58年の校舎は耐震不足に加え、雨漏りやトイレの漏水、電気設備の故障なども頻繁に発生。一度は建て替えを計画したが、資金不足のため断念し、改修計画に変更。今年6月から2億5000万円をかけて耐震工事などに着手した。募金は現在、卒業生や在日と在米の同胞コミュニティーなど1000人以上から1億8000万円が寄せられている。
朝鮮学校への補助金を巡っては国が高校無償化の対象から除外。神奈川県は2014年度に外国人学校に通う児童生徒の学費支援制度を始め、当時5校あった朝鮮学校の保護者へも同年度は4100万円、2015年度は5600万円を支給。だが2016年度から「高級学校の歴史教科書を改訂し北朝鮮による日本人拉致問題を記載する約束が果たされていない」との理由で停止した。
県弁護士会が「人権侵害」と警告も…
金校長によると、朝鮮学校の教科書は全国一律で、教員や有識者でつくる教科書編さん委員会が内容を決める。このため神奈川朝鮮中高級学校では、独自に拉致問題を記載した副教材を作成したが、県は「暫定的な対応に過ぎない」と認めなかった。補助金凍結の影響もあって生徒数が減少し、学校予算に占める授業料収入は4割にとどまり、6割を寄付に頼っている。
同校を支援する戸塚区の谷正人さん(68)は、毎月1回県庁前で生徒の父母らと一緒に補助金再開を訴えている。「教科書改訂に生徒や保護者は関与できず、まして小中学生の学費支援まで凍結したことは整合性を欠く。社会の雰囲気に迎合した行政によるいじめだ」と県を批判する。
神奈川県弁護士会は2018年に「不合理な差別的取り扱いで生徒の人権を侵害し、憲法や国際人権条約に保障される平等原則に反する」と県に改善を警告した。
しかし、神奈川県私学振興課は「補助金不交付は地方自治法に定める行政の裁量範囲と考える。教科書改訂の見通しがない中で、支給を再開することは県民の理解が得られない」としている。
神奈川朝鮮中高級学校への募金は、ハナ信用組合 横浜支店 普通1116549 神奈川ミレプロジェクト実行委員会。問い合わせは同実行委事務局=045(311)0689=へ。
朝鮮学校
学校教育法で「各種学校」とされ、都道府県知事が設立を認可する。日本が朝鮮半島を植民地支配した1910年以降、多くの朝鮮人が来日し土木工事など重労働に従事。太平洋戦争後に日本にとどまった朝鮮人の子弟に民族教育を行う学校が各地に設立された。その後、閉鎖や統廃合をへて現在、全国に約60校ある。県内には横浜市神奈川区の神奈川朝鮮中高級学校、同じ敷地の横浜朝鮮初級学校、川崎朝鮮初級学校(川崎市川崎区)、南武朝鮮初級学校(同高津区)の計4校があり、学校法人「神奈川朝鮮学園」が運営している。