学童保育は全員が入れればそれでいいのか 安心できる場を求め、保護者が運営する川崎の「自主学童」

(2023年12月27日付 東京新聞朝刊)

くつろいだ表情でテーブルを囲み、おやつを食べる児童たち=いずれも川崎市宮前区の「花の台学童保育ホール」で(木戸佑撮影)

 子どもや子育てを支えるための施策がこれまでになく論じられた2023年。「子どもが過ごす場の質」を訴える声も高まっている。そうした場のひとつ、保護者が働く子どもたちが放課後を過ごす学童保育を訪ねた。

川崎市が用意した「居場所」は大人数

 「わあ~! このパン、好きなんだ」。外遊びから戻った小学生たちが、配膳台に並んだおやつを見て声を弾ませる。6学年入り交じってのおしゃべりに花を咲かせ、どの子もくつろいだ表情を浮かべていた。

指導員の勝山翔太さん(右端)からおやつを受け取る子どもたち。勝山さんと左から2人目の田中千景さんの2人は、毎日子どもたちを見守る常勤の指導員だ

この日のおやつは、ロールパンとリンゴ。砕いたポテトチップスをマヨネーズであえた具は、ロールパンメニューの中で一番人気がある。児童のお土産のクッキーも配られた

 12月上旬の平日の午後。川崎市宮前区の「花の台学童保育ホール」には、近隣の2校に通う36人が来所。指導員3人に見守られ、保護者が迎えに来るまでの時間を思い思いに過ごしていた。

 花の台は保護者が中心となって運営する自主学童だ。川崎市は待機児童対策として2003年度、全児童を対象とする放課後の居場所「わくわくプラザ」を全校に設置したが、学校の規模によっては1学年200人を超える。午後6時までは誰でも無料で利用できるが、児童によっては大人数の環境になじめなかったり、体調不良に気付いてもらえなかったり…。花の台は「そこでは安心して過ごせない」と感じる子や保護者の受け皿にもなってきた。

「花の台学童保育ホール」に15年勤めるベテランの補助指導員・菅原さつ子さん(右端)と言葉を交わしながら工作を楽しむ児童ら

常勤指導員が一人一人に合った対応を 

 フルタイムで働く保護者の一人、松浦光里(ひかり)さん(41)は「わくわくプラザは全員入れるけれど、ただ子どもを入れているだけ。週に1日、2日ならいいけれど、毎日長時間過ごすのはきつい」と言い切る。

 1985年の開設当初から花の台に勤める専任指導員の田中千景さん(61)は「ここは約40人の定員があり、常勤指導員2人が毎日必ずいる。だからこそ一人一人の昨日の出来事から家庭の背景までを把握し、その子に合った対応や声かけができる」と話す。

コマで遊ぶ児童たち。周りの人に当たらないよう距離を取っていた

市の補助の対象外 保護者の負担は…

 ただ、「子どもの放課後の居場所は整備している」とする川崎市は、自主学童を補助金の対象と認めない。費用の事情もあり、花の台では教室の1.5倍ほどのワンルームで約40人が過ごし、保育料や運営維持費として各保護者が負担する会費は年間約40万円に上る。

コマ回しの上手な高学年の男の子たち(中央の3人)。保育園の子どもたちに教えに行く予定や技の検定を控え、練習にも熱が入る

 6年生の木本友椛(ゆうか)さんは「狭いから子ども同士がよくぶつかる。もっと広いといいし、部屋ももう一つほしい。無理だからいつもは言わないけど」と打ち明けてくれた。それでも、「花の台の良さ? 子どもが企画するイベントがたくさんあって、高学年になっても楽しく過ごせて…。たくさんあるけど、一度来たら分かる」と満足そうに笑う。

 田中さんは言う。「子どもが『行きたい』と思って通える場でないと、保護者は安心して働けない。安心できる場をつくることが、最大の就労支援だと思う」

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コメント

  • 悪名高き?わくわくでの勤務経験がある者です。わくわくは無料で預かりをしています。花の台は年間40万の会費を集めているのですから安心安全は当たり前。わくわくがストレスの元とか、ただ子どもを入れているだけ
    ピーナッツそ 女性 50代 
  • 子どもが行きたいと思えるのは人数や固定メンバーというところもあるけれど、保護者の方の自主性協働性の影響が大きいと思います。 指導員はどちらもご尽力くださいますが、子どもだって小2にもなれば預から
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