神奈川県の「子どもの生活状況調査」を本紙が独自分析したら… 低所得世帯ほど自己肯定感が低かった

志村彰太 (2024年4月23日付 東京新聞朝刊)
 神奈川県が昨年実施した「子どもの生活状況調査」について、東京新聞は集計前データを独自に分析した。その結果、所得の低い世帯の親子ほど、生活満足度と自己肯定感が低い傾向が示された。一方、所得が高い層では子ども食堂など食事支援への要望が多かった。経済的に安定しても、共働きで子育てとの両立に課題があることを映し出しているという見方も出ている。

情報公開請求で集計前のデータを入手

 この調査は、昨夏時点で中学2年の子どもがいる神奈川県内の家庭から4320世帯を抽出して実施。保護者1715人、子ども1585人が回答し、県は今年3月に報告書を公表した。ただ、県による集計は収入の実額ではなく、世帯人数に応じた相対額を算出しているため、分析結果を見ても実際の社会状況に結び付けて捉えにくい面があった。

 東京新聞は集計前の匿名化データを情報公開請求で入手。所得と世帯人数、支援に関するニーズ、生活満足度などの質問項目を重ねて分類する「クロス集計」を行った。所得と生活状況の関係性を明らかにするため、世帯人数別に所得階層を分類。所得の低い方から「3割程度」と「それ以上」の回答の傾向を比較した。線引きの基準は、それぞれ一定のサンプル数を確保する必要性などを踏まえた。

 調査では年収を50万~100万円区切りで質問している。世帯人数別に下位3割程度を線引きすると、2人世帯は250万円未満、3人世帯は500万円未満、4人以上の世帯は700万円未満だった。

ヤングケアラーの割合も所得下位が…

 顕著な違いがあったのは、精神的な不安定さや自己肯定感を推し量る項目。保護者向けの「神経過敏に感じた」と「自分は価値のない人間だと感じた」という質問に、「いつも」「ときどき」など肯定する回答をしたのは、下位3割がそれぞれ39.7%、23.3%だったのに対し、それ以上が24.7%、11.4%と、いずれも10ポイント以上低かった。

 子ども向けの「心配ごとが多く、いつも不安だ」「落ち込んでしずんでいたり、涙ぐんだりすることがよくある」の各質問への「当てはまる」などの答えも、下位3割がそれぞれ53.4%、45.0%で、それ以上が42.4%、38.4%と差があった。ヤングケアラーかどうかを確かめる「身内に世話をしている人がいるか」という問いに「はい」と答えた子どもは92人にとどまったが、所得下位層の方が割合は高かった。

意外…子ども食堂は高所得層が希望

 希望する支援策(複数回答)では「子ども食堂や宅食など」が下位3割の保護者で17.8%、子どもで17.4%だったが、それ以上は保護者が24.8%、子どもが20.0%と上回った。子ども食堂は生活困窮家庭やひとり親家庭などを支える目的で始まった経緯がある。神奈川県次世代育成課の担当者は「所得が高い方が子ども食堂を求めているのは意外。おそらく共働きで食事を用意するのが大変という事情からだろう」と話す。

 「放課後の居場所」を求める子どもの割合は、所得層による違いはなく、いずれも30%ほどだった。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年4月23日