不登校新聞20年 悩める子の支えに 「苦しんでいるのは自分だけじゃない」
「楽しかった学校」が変わった4月
今月24日、東京都北区のビルに入る編集局は、最新号の校正作業に追われていた。「“楽しかった学校”が変わった4月」。前回の15日号では、1面で不登校になった少女(15)の体験談を取り上げた。タブロイド判8ページの紙面は、相談先の紹介や関連行事の案内など、情報が満載だ。
不登校新聞は市民団体が母体となって創刊した。現在はNPO法人・全国不登校新聞社が月2回、紙版と電子版で発行。自らも不登校だった石井さんらスタッフ3人と若手ボランティア総勢130人が、月1回の会議で内容を話し合う。
不登校は怠けや甘え、逃げ、社交的でないといった性格や、心の病が強調されがちだった。2001年には町村信孝文部科学相(当時)が「履き違えた自由が不登校を生む」と発言し、物議を醸した。こうした偏見の解消にも、紙面を通じて取り組んできた。
どの子も不登校になり得る
近年、どの子も不登校になり得るとの認識が広まり、フリースクールなどの受け皿も増えている。文科省の調査では、児童・生徒の全体数は減る一方、不登校の子の数や割合は増加。1997年度の約10万5千人(0.85%)から、2016年度は約13万4千人(1.35%)となった。
石井さんは「大型連休明けは夏休み明けと並び、不登校になる子が増える」と説明。「悩む人たちに、必要な情報を届けたい」と話している。新聞は月額820円。購入などの問い合わせは編集局=(電)03(5963)5526=へ。
苦しんでいるのは自分だけじゃない 「不登校新聞」参加で笑顔戻った
「私には何をしてもいい」いじられキャラが定着
「私には何をしてもいいという『いじられキャラ』が定着してしまった」。水口さんは、学校生活をこう振り返った。
スクールカーストは、多人数から一人へのいじめではなく、序列上位の子が下位の子に権力をふるい、いじめが生まれやすくなる。
つらかったのは、高校で担任教師に訴えても「からかい」程度の認識で、いじめとは受け取ってくれなかったことという。
同じような人がたくさんいるんだ!広がった視野
高校3年の秋に不登校になった。別の理解ある教師の支えで何とか卒業したが、就職後にそれまでの我慢が限界を超えた。仕事に行けなくなり、引きこもり、インターネットで死に方を調べる日々。ある日、母が不登校新聞の存在を教えてくれた。
「自分と同じような人がたくさんいるんだ」と興味を持ち、編集会議に参加。取材を通して視野を広げていった。不登校の時期は「自分が弱いだけ」「甘えているんだ」と自らを責めたが、会議ではつらい経験も話すことができ、「殻を破れた」と思った。
昨秋、通信制の大学に入り、心理学を学んでいる。中学生や高校生と話すと、自己評価の低さが気になる。「あの子たちを一人にさせたくない。そのために何をすべきかを探している最中」と話す。
今は、無料通信アプリ「LINE(ライン)」やツイッターなどのSNSで「死ね」「うざい」といった過激なやりとりが、気軽にされる。スクールカーストの背景について、水口さんは「相手が傷ついているのが分かりにくくなっているのかな」と心を痛めている。
不登校とは
文部科学省の定義では、何らかの心理的、情緒的、身体的、社会的要因・背景によって登校しない、したくてもできない状況にあり、病気や経済的な理由以外で、年間30日以上欠席した児童・生徒とされる。1966年度から実態調査を始めた。当初は「学校嫌い」としていたが、98年度に「不登校」と呼称を変更。欠席日数を「50日以上」から「30日以上」にした。
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