川口いじめ、ネットで被害者の実名さらされた 東京地裁が投稿者の情報開示命令
学校名入りスレッドで「虚言癖がある」
訴状などによると、提訴は6月12日付。元生徒の実名やあだ名をさらした4件の書き込みについて、発信者の名前と住所、メールアドレスの開示をプロバイダー3社に求めた。
元男子生徒は、2015年の入学まもなくからサッカー部内で仲間外れや暴言、暴力を受け、2年生の秋には自殺未遂を起こした。17年10月ごろ、誰でも見られるネット掲示板に、学校名入りで元生徒のいじめが話題(スレッド)に設定され、元生徒や母親を「虚言癖がある」「モンスターペアレンツ」などと中傷し、元生徒の実名やあだ名をさらす匿名の書き込みが相次いだ。
実名やあだ名「プライバシー侵害」と認定
判決では、「いじめを受けた事実は、無限定に広まると偏見や中傷を招きやすい」とし、実名やあだ名の書き込みがプライバシーの侵害に当たると認めた。元生徒へのいじめは、今年3月に市教委の第三者委員会が認定している。
プロバイダーから発信者情報が提供されれば、元生徒側は精神的苦痛など賠償請求が可能になり、提訴も検討している。
プロバイダー側は取材に対し「判決文が届いていないのでコメントできない」などと答えた。
生徒の母親「見えない相手、注意も話し合いもできない」
「開示命令が出てよかった。見えない相手には注意も話し合いもできず、不安が強かった」。判決を受け、元生徒の母親はほっとした表情を見せた。
ネット掲示板への書き込みが激しくなったのは、中学校が元生徒へのいじめについて保護者説明会を開いた直後だった。校長らの説明に事実と異なる点が多く、元生徒側に問題があるとして中傷する書き込みが集中した。
母親によると、元生徒は友達から掲示板の存在を知らされ、口を利いてもらえなくなったり、知らない生徒から指をさされたりした。「自転車に乗っていた」などと行動を監視するような書き込みもあり、外出が怖くなった。高校生になった今も、新しい友だちが掲示板を読んで離れる不安にさいなまれるという。
荒生弁護士は「発信者を特定する裁判は時間も費用もかかり、いじめ被害者が提訴に踏み切った例はあまり聞かない。今回は元生徒や母親に、提訴することでネットいじめを減らしたいという思いが強かった」と説明。母親は「書き込んだ人には、自分が特定されることで、身元を明かさず人を傷つけた悪質性に気付いてほしい」と訴えている。