イラストレーター 本田葉子さん 姑・息子と「いい関係」で同居する秘訣は
夫を見送り、小田原の古民家に住まいを移す
一昨年の夏、40年近く連れ添った夫=享年(65)=を見送りました。皮膚がんの手術に始まって、約8年の闘病生活。最期は白血病でしたが、本人も家族も治ると信じ、職場復帰の準備をしていた矢先でした。
見送ってからも大変。当時は都内に夫の仕事場を兼ねた広い家を借りており、夫の収入がなければ家賃を払えない。慌てて遺品の整理と郊外の家探しを始め、3カ月後、もともと同居していた義母、長男とともに神奈川・小田原の小さな古民家に引っ越しました。友達は「すごいわね~。私にはとてもできない」なんて言うけど、悲しくても、残された者は生きていかなきゃならない。人は切羽詰まれば動く。
95歳の義母「当たり前にそこにいる」関係
小田原に決めたのは家賃や間取りのほか、私が一度海の近くに住みたかったことや、中型犬がいるのでペット可であることなどが理由。偶然だけど、義母はもともと小田原出身なので大喜び。長男も大賛成で、新居から通える仕事を新たに見つけました。
義母の通院日は天気が良いと、私が車いすを押して行きます。元教員で、95歳ながら頭はしっかり。夫と結婚してからずっと同居なので、嫁姑(しゅうとめ)というより、お互い「当たり前にそこにいる」という感じかな。義母の方が、気を使ってくれてるかも。
20代後半になった長男には「いつ家を出るのかしら」とイラッとするときもあるけど、夫の入院中、私と交代で付き添ってくれたり、私が酔って荒れたときにフォローしてくれたり。いなければいないで、私が困るのかもね。
つかず離れず。お互いに深入り、深追いしない
同居のコツ? 「お互いに深入り、深追いしない」。義母には義母の世界や好みがあります。長男は年中量販店の服で平気なタイプだけど、「おしゃれ」の助言なんてしません。「朝ご飯できたよ」と声をかけ、誰も起きてこなくたって気にしない。置いておけば後で食べるから、先に済ませて出掛けます。
あとは、お互い不満をため込まず、なるべく小出しにすることかな。私がハキハキしゃべるのが義母には時にきつく感じられるそうで、「詰問しないでよ」とたしなめられたこともあります。
私は生来、バカみたいにポジティブ。お天気の日は、朝から犬と海岸を散歩したり、帰りに畑いじりをしたり。楽しいわよ。夜はとれたての野菜と生しらすを肴(さかな)に、キッチンでチョイ飲みしたりね。長女も湘南住まいで、ときどきダンナさんや孫と一緒に遊びに来ます。個人主義、だけどつかず離れず。今の暮らしを始めて、ホントに良かったと思ってます。
本田葉子(ほんだ・ようこ)
1955年生まれ、長野市出身のイラストレーター。最新刊「おしゃれと暮らしのレシピ」(東京新聞刊)の出版を記念したイラスト展を4月26日から、東京都世田谷区のギャラリーHANA下北沢=電話 03(6380)5687=で開く。