共同親権めぐり別居親の「子どもの居所指定権」案が浮上 民間団体が批判「DVや虐待の被害者を危険にさらす」
大野暢子 (2023年5月24日付 東京新聞朝刊)
法制審議会(法相の諮問機関)が導入を議論している離婚後の「共同親権」を巡り、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者らを支援する民間の4団体が23日、都内で記者会見を開いた。子どもがどこに住むかを決める民法上の「居所指定権」を別居親にも与える案が浮上していることについて「DVや虐待の被害者を危険にさらすものだ」と反対を表明した。
「被害の実態とかけ離れた議論」
ひとり親世帯を支援する認定NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事長で、法制審家族法制部会委員でもある赤石千衣子氏は会見で「居所指定権を含む共同親権が導入されたら、DV被害者は居場所を隠せなくなる」と懸念。病児保育を運営する認定NPO法人「フローレンス」会長の駒崎弘樹氏も「国民がリアルタイムで内容を知ることのできない会合で、DVや虐待の実態とかけ離れた議論が行われている」と批判した。
現行民法では、婚姻中は父母の双方が親権者となり、子の世話や教育、居所指定などを行う「共同親権」を規定。離婚後は、父母のいずれかが親権者となる「単独親権」を定めている。
部会では現在、話し合いで別れる協議離婚のケースで父母が合意した場合、共同親権を認める方向で議論が進む。将来的には、父母の一方が共同親権に反対でも、裁判所が命令できる仕組みになる可能性もある。
法制審の検討資料「離婚後も適用」
赤石氏らが23日の会見で特に問題視したのは、法務省が16日の家族法制部会で示した検討資料。日常的な行為や緊急の対応は一方の親だけでもできるが、子の居所指定は共同で行うとする婚姻中の原則を、離婚後も適用するとの考え方が例示された。
会見には、出産後に夫から暴力を受け、離婚したという30代の女性も出席。「現行制度でも信頼関係のある父母は協力して育児している。信頼関係がないのに法律で共同親権を強制されても話し合いは不可能だし、子を紛争に巻き込む」と訴えた。