〈ペアレント・トレーニング〉4・子どもの行動にカチン!→気付かないふりで待ってみよう

(2019年1月11日付 東京新聞朝刊)

 「ペアレント・トレーニング」の第4回は、いよいよ子どもの「してほしくない行動を減らす」ステップに入ります。ついつい口を出し、しまいにはガミガミ怒ってしまうようなお子さんの行動、ありませんか? 書いている記者も日常茶飯事です。最終的に子どもが言うことを聞いてくれたとしても、後味が悪くて悪くて…。もちろん子どもの方にも嫌な気持ちが残ります。こんな悪循環とサヨナラするヒントをいただきました。試して3カ月。その結果は…!? 今回は、臨床心理士の三間直子さんに、「いつも子どもが食事に文句を言う」という悩みを相談しました。

悩み「小2の息子が、いつも食事に文句を言います」

 好き嫌いの多い小学2年生の息子。いつも食事のメニューに「これ食べたくない」「無理」と文句を言うのでカチンときてしまいます。

解決のヒント「気付かないふりで待ってみましょう」

<臨床心理士・三間直子さんから>

 そう言われると、嫌な気持ちになりますし、悲しいですね。

 前回まで、子どもをたくさんほめるこつをお伝えしてきました。良い関係がつくれたら、次のステップ「してほしくない行動を減らす」段階へ進みましょう。

 今回は「気付かないふりで待つ」練習です。「食事に文句を言う」といったような、好ましくない行動に対しては、つい「文句ばっかり言わないの」と注意したくなるのではないでしょうか。でも、注意をすると、子どもはさらに文句を言ってきて、親子で言い合いが続いてしまうことはありませんか? ここは、あえて反応せず、ぐっとこらえてみましょう。

ポイントは、視線を外す/気をそらす/徹底する。そして、すかさずほめる!

 まず、子どもから視線を外しましょう。好ましくない行動をしている様子を大人がじっと見続けていると、子どもは何かしら文句を言ってくるものです。大人側はさらに嫌な気持ちやイライラが大きくなり、子どもに否定的な感情が伝わってしまいます

 素知らぬ顔で食べ続け、好ましくない行動に気付かないふりをしながら、好ましい行動に切り替わるのを待ちます。よく食べている他のきょうだいをほめてもよいでしょう。また、怒りたい気持ちを「ただ我慢する」のは、とってもエネルギーが必要で大変なことです。感情をコントロールするために、親はそばで家事をしたり、時計の秒針を見つめたりして、別のことをしながら待ってもよいでしょう。そして、子どもが諦めて食べ始めたら、すかさず「食べてくれてうれしい」とほめます。

 親が応じないでいると、好ましくない行動は一時的に激しくなったり長く続いたりすることがあります。親が応じるまで「絶対食べない」「お母さんの意地悪!」と騒ぎ立てたりするかもしれません。こらえきれず応じると、次からもそのパターンが繰り返される可能性があります。待つことを決めたら徹底しましょう。

 ポイントは、子どもがしてほしくない行動をやめて、好ましい行動が出てきたら、すぐにほめること。これが大事です。ほめることで、子は親が好ましい行動を待っていたために反応しなかったことが分かりますし、好ましい行動をして良かった、と安心できるのです。

「気付かないふりで待つ」子どもの行動とあなたの対応を書き出すためのPDFファイルを、こちらからダウンロードできます。

 

担当記者がやってみると…

 夕食中、いつものように息子がナスを使った料理に対して「これ嫌い」と言い始めました。反応せずに、穏やかな顔で娘の方を向いておしゃべりを続けていると、息子は3回くらい文句を言った後、ぶすっとした顔で食べ始めました。すかさず息子の方を向いて「苦手なのに頑張ってくれてうれしいな」と伝えると、意外だったのかハッとした顔になりました。やりあって嫌々食べてもらうより、格段に後味が良かったです。

 わが家では、この対応を繰り返していたところ、3カ月ほどたった今では、息子が「これ嫌い」「無理、食べられない」と言わなくなりました。今は、「これ苦手だから、少し減らしてもいい?」「半分食べたんだけど、あと何個食べればいい?」と、やわらかい表現で相談(交渉?)してくれるようになりました。

 「全部食べなさい」と無理やり食べさせる方法しか知らなかったら、息子のこんな言葉にも出合えなかったと思うと、こういうやりとりの仕方を学べてラッキーだったと感じます。

↑書き出して振り返ってみましょう。「気付かないふりで待つ」ことの効果をより実感できます

   

 「ペアレント・トレーニング」は発達障害児の親向けに採り入れられることが多い手法で、子育てのさまざまな場面で有効です。「お母さん、いつも怒ってるよね」と言われてしまった4歳、小学2年、4年の3児を子育て中の記者が、実際にペアレント・トレーニング講座を受講。実施経験が豊富な、心身障害児総合医療療育センター(東京都板橋区)の小児科医・長瀬美香さん(50)と臨床心理士・三間直子さん(47)に、声掛けや振る舞い方のヒントをいただきながら進みます。
※「笑顔が増える ペアレント・トレーニング」は毎月第1金曜に掲載します。次回の掲載は2月1日です。

コメント

  • 家ではこのやり方を取り入れていますが、外の世界ではこのやり方が認知されていないので、肩身が狭いです。 電車・出かけ先・旦那の親族・学校や保育園、幼稚園・外で友達と遊ぶ時など意外と困る場面が多いで
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  • 毎回文句ばかりで少食の子供の相手をするのも辛くなり、文句を言い出したら反応しませんが、その後食べることはありません。苦手だからとか美味しくないとかでもなく、気分の問題。その時は本当に食べたくないんだと
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