〈ペアレント・トレーニング〉12(最終回)・学校での行動にはどう対応?→先生と3種類の目標を共有しよう

(2019年9月6日付 東京新聞朝刊)

 「ペアレント・トレーニング」の最終回は、「学校での子どもの行動」について考えます。過去11回の連載では、「目の前の子どもの行動」=「親が自分の目で見ることができて、直接関われる行動」をテーマにしてきました。しかし、親が直接できることに限界がある分、「子どもが長い時間を過ごす学校での授業態度や、友達・先生とのやりとりが一番心配」という方も多いのではないでしょうか。「うちの子の授業態度が悪すぎて、先生やクラスの仲間に迷惑をかけているのではないか」と常々心配している記者が、学校での気がかりな行動への対応について、臨床心理士の三間直子さんに相談しました。ポイントは、先生と3種類の目標を共有することだそうです。(過去の記事一覧はこちら

悩み「授業態度に課題がある息子。学校での行動には、どう対応すればよいですか?」

 小学3年生の息子は、授業態度に課題があるようです。学校での気がかりな行動には、どう対応すればよいでしょうか。

解決のヒント「短期・中期・長期の目標を、先生と共有しましょう」

<臨床心理士・三間直子さんから>

 これまでの連載では、家庭内や外出先など目の前にいるお子さんの「好ましい行動」を増やす方法や、「好ましくない行動」「危険/許しがたい行動」への対処法を紹介してきました。ほめることで好ましい行動が増えると、取り立てて注意しなくても好ましくない行動が減ることを実感されてきた方も多いと思います。連載の最終回となる今回は、学校での行動について考えます。

 学校でも家庭同様、大切なのは、子どもができそうな目標を立てることです。そのためには「最終的な目標に対して、子どもが現時点で何をどのくらいの確率でできているか」をまず把握することが必要です。

 「授業中、席に着いて先生の話をすべて聞き、授業の流れに合わせて課題に取り組む」のを理想とすると、今のお子さんはどの程度できているでしょうか。達成率が50%なら80%に、80%なら100%にすることを考えましょう。0%なら、手助けをして10%に持っていき、そこから20%、30%と増やしていけばいいのです。

 学校での目標を、ただ「授業に参加する」ではなく、小さいステップに分けて具体的な行動として挙げましょう。「チャイムから30秒以内に席に着く」「ノートと教科書を先生の声かけですぐに出す」といった小さい目標を設定すると、達成しやすくなります。親や先生も子をほめやすくなり、子もほめられると、ますます好ましい行動をするようになります。

 短期(1カ月程度)・中期(数カ月)・長期(半年以上)の目標を先生と共有しましょう。短期目標をもとに、週ごとに親子で目標を決めて、毎日振り返ります。その際、できなかったことには注目せず、できた行動をほめます。振り返りシートを作り、先生にできた行動に○を付けてもらえば、より効果的です。

学校での子どもの課題に対処するポイント
・長期目標(半年以上)、中期目標(数カ月)、短期目標(1カ月程度)を意識する
・子どもが現時点で、何を、どのくらいの確率でできているかを見定める
・まずは子どもが達成率を上げられそうな小さな目標を具体的に立てる
・先生と目標を共有し、一緒に肯定的な声かけをしてもらう
・週ごとに親子で目標を決めて毎日振り返り、できた行動をほめる
・振り返りシートを作り、できれば先生にもチェックしてもらう

 子どもの心配な行動が、すぐに、全て解消することはありません。ほんの少しでも改善が見られたら、すぐにほめ、よい循環をつくっていきましょう。

「学校での目標とステップごとの達成率」を書き出す表のPDFファイルを、こちらからダウンロードできます。

担当記者がやってみると

 先生と一緒に子の現状を行動として細かく具体的に挙げ、今はどの程度達成できているかを書き出してみました=イラスト。

 まずはできそうな行動として、B、H、Nを短期目標に。「本当はA、G、Mが100%できたらいいけれど(長期目標)、まだ難しそう。短期目標が達成できたら、中期目標としてA、G、Mが少しずつできるように見守ろう」と共有しました。小さなステップを意識すると、私も子をほめやすくなりました。毎晩、先生が○を付けてくれた表を見ながら息子と振り返っています。

=おわり

 「ペアレント・トレーニング」は発達障害児の親向けに採り入れられることが多い手法で、子育てのさまざまな場面で有効です。「お母さん、いつも怒ってるよね」と言われてしまった5歳、小学3年、5年の3児を子育て中の記者が、実際にペアレント・トレーニング講座を受講。実施経験が豊富な、心身障害児総合医療療育センター(東京都板橋区)の小児科医・長瀬美香さん(50)と臨床心理士・三間直子さん(47)に、声掛けや振る舞い方のヒントをいただきながら進んできました。

※「笑顔が増える ペアレント・トレーニング」は、今回が最終回です。連載を振り返る記事を10月に掲載予定です。過去の記事はこちらで読むことができます。