「日本の子どもは投げすぎ」元西武ライオンズ熊沢さん、野球塾と整骨院を経営 ケガから守りたい
米国で松井稼頭央選手の個人コーチに
所沢商業高(所沢市)では強打の外野手として鳴らし、1991年のドラフト3位で西武に入団。現役時代、チームの理学療法士のケアで体の柔軟性が高まったことをきっかけに、コンディショニングへの関心を強めた。引退後は2軍スタッフをしながら、コンディショニングや野球技術を独学で勉強。当時、主力内野手で仲が良かった松井さんに体のケアや技術面の助言をして活躍を支えた。
2005~2007年には、米大リーグに舞台を移した松井さんと個人コーチ契約を締結。守備面で苦戦していた松井さんに、キャッチボールのやり方から見直して指導し、スムーズな投げ方に矯正した。基本から徹底的に磨き直したことが功を奏し、松井さんは2007年にレギュラーの座を勝ち取り、二塁手として安定した守備を見せた。
キャッチボールで正しい投げ方を徹底
体のケアと基本技術を大切にする指導方法は、2012年に開校した野球塾「リアル・ベースボール・アカデミー」でも一貫している。子どもたちには、まずは正しい投げ方ができるまでキャッチボールを繰り返させる。
「基本に忠実なキャッチボールができれば試合で良いパフォーマンスが出せるだけでなく、正しく体を使うことでけがをしにくくなる」と熊沢さん。選手時代に参加した野球教室では、けがで見学をしている子が多かったという。「正しいリハビリを施して野球を楽しめるようにしてあげたい」と塾経営のかたわら専門学校に通い、2015年に柔道整復師の資格を取得。入間整骨院を開業した。
寒い中で投げるのは指導者の自己満足
整骨院には一般患者のほか、野球でけがをした小中高校生が首都圏や関西からも訪れる。投球による肩やひじの故障が目立ち、熊沢さんは「日本の子どもは毎週のように大会や試合があり、一年中投げすぎ。手がかじかむ寒い中でボールを投げさせるのは、指導者の自己満足でしかない」と警鐘を鳴らす。
少年野球では近年、投手の球数制限を設ける大会も増えている。「一番大事な幼少期に将来をつぶすことはあってはならない。指導者や全スタッフが、子どもの将来に強い責任を持って接してほしい」と願う。
熊沢(くまざわ)とおる
埼玉県新座市出身。小学5年生から野球を始め、所沢商業高では通算52本塁打。1991年のドラフトで西武に入団。1軍出場なく1998年に引退した。2008~2011年に西武で打撃コーチ補佐などを務め、後に打撃タイトルを獲得する浅村栄斗選手(現楽天)や秋山翔吾選手(現米大リーグ・レッズ)らを育てた。入間市在住。