腸活・睡眠・柔軟 スポーツで上を目指す子どもたちへ、一流アスリートの体調管理術を教えます
【腸活】おなか温め調子良く
「トップで活躍する選手は情報をしっかり取得している。ただこれから上を目指していく選手は、まだまだリテラシー(情報を適切に理解する力)が高くないように思う」
元日本代表で中盤の要を担った元J1浦和の鈴木啓太さん(41)は、情報があふれる現代社会で、スポーツ選手が有益な体調管理の情報を取得できているかについてそう語る。意識次第で「もっと伸びる要素はある」と続ける。
2015年シーズン限りで引退した後は、腸内細菌を研究する会社の社長を務める鈴木さん。多くの人の声を聞く中で「トイレに1週間もいかなかったり、逆にトイレがどこにあるか常に確認しないといけないような状況(の人)もストレス」とおなかの不調も人それぞれだと感じたという。腸内環境を整えるには「菌の多様性が大事」などの研究報告をもとに、幼少期から取り組める情報も発信する。
原点は小学生のころ、調理師の母親から「人間は腸が一番大事」と聞かされてきた。最近は腸内細菌のバランスを整える「腸活」と注目されているが、当時は「腸と言われて何のことか分からなかった」と振り返る。「今思えばヨーグルトや発酵食品をよく食べていた」といい、母親の言っている意味が分かるようになると「僕はおなかを温めた方が調子が良かったので」と、緑茶や梅干しを遠征に持参することも欠かさなかった。
U-23(23歳以下)日本代表の主将として挑んだ04年アテネ五輪アジア最終予選中、チーム内で体調不良者が相次ぎ、トイレから離れられない選手が何人もいる状況に陥った。症状の重い選手もいてメンバー入れ替えに発展した。一方で鈴木さんは「僕は大丈夫な方だった」。苦しみながら五輪出場権を手にした当時の日本チームで鈴木さんは比較的良好だった。「おなかは大切。おなかを壊した状態では良いパフォーマンスは出せない」と教訓にする。
【睡眠】短くてもしっかりと
細かな経験の一つ一つをいかに次世代に伝えていくか。昨年のワールドカップ(W杯)カタール大会で日本代表の16強入りに貢献したJ2清水の権田修一(33)はW杯後に東京都内で行われたイベントで、睡眠について報告した。
日本と時差6時間のカタールでの生活。権田は「現地で夜早く寝てしまうと、感覚的には昼寝をしている感じになるので早く目が覚めてしまう」と振り返る。「短い時間でもしっかり睡眠をとることが大事」と愛用のマットで疲労軽減につなげたという。
ドイツ1部ボルシアMGの板倉滉(25)も「基本は8時間、最低でも7時間は寝たい。シーズン中は寝ている時が一番疲労が取れるので、睡眠を大事にしている」と語った。
【柔軟】風呂上がりストレッチ
昨年末、食品メーカーと日本サッカー協会が共催したオンラインによるU-12世代向けのイベントで、子どもたちの講師役となったのは、Jリーグ通算249得点の元日本代表、佐藤寿人さん(40)。バランスの良い食事の取り方はもちろん、体の柔軟性を養う大切さを伝えた。
佐藤さんは成長段階で「捻挫が多かった」といい、「足首の硬さから」と理由を明かす。ボールを蹴る際の軸足をうまく地面に着けないと、捻挫する機会が増えるという。体が温まっている風呂上がりなどに取り組んでほしいストレッチ方法を紹介した。
「大人になってから身につけようと思っても筋肉が硬いので、軟らかい筋肉の状態で柔軟性をつけることが大切」と佐藤さん。「24時間の使い方の中でトレーニング、休息、しっかりとした栄養を取ることで体をつくることができる。試合で結果を出しても満足せず、次に向けて積み上げていくことが大事」と話す。