「結愛ごめんなさい」目黒虐待死、母が被告人質問で涙 亡くなる直前2人で見たDVD
山下葉月 (2019年9月6日付 東京新聞朝刊)
東京都目黒区で昨年3月、両親に虐待された船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5つ)=が死亡した事件で、保護責任者遺棄致死罪に問われた母親の優里(ゆり)被告(27)の裁判員裁判が5日、東京地裁であり、優里被告は被告人質問で「結愛にごめんなさいと謝り続けるしかない」と涙した。
「結愛が太った」と母を責め、食事を減らした父
2015年に香川県で夫の雄大(ゆうだい)被告(34)=同罪と傷害罪などで起訴=と出会ったころは、「幅広い知識を持っている人」と尊敬していた。だが、翌年に結婚すると優里被告の行動や性格を否定するようになり、実子ではない結愛ちゃんには「しつけ」と称して暴力を振るうようになったという。
児童相談所による2度の一時保護を経て、優里被告と結愛ちゃんは昨年1月、目黒区に転居。1カ月早く上京していた雄大被告は「結愛が太った」と優里被告を責め、結愛ちゃんの食事は「スープにごはんを混ぜたおじやなどだけになった」という。
「DVの認識なく…もっと周りを頼るべきだった」
雄大被告に何度も殴られ、2月27日からは毎日嘔吐(おうと)するようになっていた結愛ちゃん。「病院に連れて行かせて」と雄大被告に頼んだが、「あざが消えたらね」とかわされたという。
亡くなった3月2日の午後、優里被告は雄大被告に「とにかく外に行って」と頼み、一緒にDVDを見るなどして過ごした。間もなく結愛ちゃんは死亡。そのときの心情を弁護人に問われた優里被告は、うつむいたまま押し黙った。
雄大被告から「おまえに育児は任せられない」などと説教を受け続けていたという優里被告。「当時はDV(ドメスティックバイオレンス)という認識はなかった。誰かに助けを求めるという考えも浮かばなかった。もっと周りを頼るべきだった」と悔やんだ。