男児用水着はメッシュのインナーに注意! 性器の皮膚がはさまる事故に 1~2ミリの穴でも危険、取れない時は病院へ
水膨れのように… 脱ごうとして気づく
2010年以降、12件の事故情報が医療機関ネットワークと全国消費生活情報ネットワークシステムに寄せられている。国民生活センターの担当者は「比較的軽微な傷で済むため、届け出に至らないケースも多く、実際の発生件数はもっと多いとみられる」とする。
昨年8月には、海水浴に行った6歳の男児が、はいていた海水パンツのインナーのメッシュ生地に陰茎部の皮膚が挟まって水膨れのように膨らんでしまい、脱げなくなった。医療機関を受診したところ、「後遺症は残らないが、通院の必要がある」と診断された。
2018年6月には、家族とアスレチックに遊びに行き、いかだ遊びなどで水にぬれるため5時間ほど水着を着ていた5歳の男児が、着替えて帰ろうとしたところ、水着のインナーのメッシュ生地に陰茎部の皮膚が挟まっていた。挟まった部分が水疱(すいほう)のようになって取れないため、その部分を残して切り取り受診した。
2017年8月には、兄用に3年前に購入した海水パンツのお下がりを着用した3歳の男児が同様の状態になり、陰茎部から出血した。
国民生活センターの担当者は「水着を脱ごうとして気付くケースが多い。水遊びに夢中になったり、水中で冷えて患部の感覚が鈍くなったりすることで、痛みを感じにくくなって気付くのが遅れるのではないか」と指摘する。
腫れ上がると、自ら取り除くのは困難
富山大付属病院小児科の種市尋宙(ひろみち)医師は、メッシュ生地に陰茎部の皮膚が挟まり取れなくなる過程を以下のように説明する。
- 男児の皮膚が水着のインナーのメッシュ生地に密着すると、伸縮性に富んだ皮膚がメッシュの穴から外部にはみ出し、メッシュから圧迫を受け始める。
- 局所的に小さな静脈が圧迫を受け、採血の際に腕にバンドを巻いて血流を止めるのと同じような状況となる。
- 外部にはみ出した皮膚では、局所的な静脈還流障害が起こり、静脈から水分が漏れ出すことで皮膚が徐々に腫れ上がる。
- 外部へはみ出した皮膚が腫れ上がると、はみ出していく力もより強くなり、また、メッシュが皮膚を強く圧迫することで激しい痛みが起こる。このような状態になると、自らメッシュを取り除くことは難しくなる。
無理に外そうとすると、皮膚が傷つく
種市医師は「挟まってしまった場合は、無理に外そうとしたり、患部付近のメッシュを刃物などで切り離そうとしたりしないでほしい」と注意する。子どもが痛がって動き、誤って皮膚などを傷つけてしまう恐れがあるという。
「振動によって痛みが生じるので、患部の周りのメッシュを安全な範囲で切り取り、挟まっているところを残したまま、小児科や救急科、泌尿器科などの医療機関を受診して」とアドバイスする。上の図のような程度の創傷であれば、後遺障害はないとみられるという。
ガイドライン化されたが…今も販売中
種市医師によると、こうした事故によるものとみられる症例報告は1998年ごろからある。2010年には、事故を防止するため、子ども用衣類の設計に関する安全対策ガイドラインに「水着のインナー素材にはメッシュ形状素材を用いないこと」と盛り込まれた。2014年には消費者庁から、2016年には、日本小児科学会からも注意喚起が行われている。
しかし、国民生活センター商品テスト部が調査したところ、インターネットの通販サイトには、過去の症例と同じように、直径2ミリ前後の大きさの穴が空いたメッシュ生地を用いた商品が販売されていた。
ネット通販やお下がりは生地をチェック
一方、東京都と神奈川県のショッピングモールや百貨店などの実店舗では、同様の商品は確認できず、目の細かいニット生地の商品などが販売されていたという。
商品テスト部の室慎さんは「インターネットで水着を購入する場合は、特に注意してメッシュ生地の有無や穴の状態を、掲載写真などでチェックするようにしてほしい。親類や知人から譲り受ける時も注意して」と呼びかけている。
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