家庭での性教育、3歳からお風呂で キーワードは「水着ゾーン」 性犯罪から子どもを守るために

(2020年1月10日付 東京新聞朝刊)
 インターネット上にあふれる過激な性描写のアダルトサイト。会員制交流サイト(SNS)経由で子どもが性犯罪に巻き込まれる事件も後を絶たない。子どもの妊娠などの問題に関わってきた産婦人科医ら専門家は性教育の重要性を指摘するが、保護者にとって性の話題はハードルが高い。望まない妊娠を避け、子どもを性犯罪の被害者、加害者にしないため、上手な教え方を学びたい。

図解 性被害から子どもを守るために

中1の息子が、レイプまがいのアニメを

 さいたま市の母親(48)は昨年7月、親子兼用のタブレット端末を見て驚いた。目に入ってきたのは、アダルト系のアニメサイト。嫌がる少女を男性が押し倒して性行為をする場面が描かれていた。中学1年の長男(13)に問いただすと、サイトを見たことを認めた。

 「年ごろの男の子が性に興味を持つのは自然だが、レイプのような性描写は見過ごせない」。母親は、妊娠の可能性がある性行為は責任が伴うことや互いの同意が必要であることなどを教えた。子どもがネットに簡単にアクセスできる今、「親が性教育をする必要性を感じた」という。長男は「母と話し、女性を大切にしなきゃいけないという気持ちになった」と話す。

AVが”教科書”に 避妊の誤った知識

 「アダルトビデオ(AV)やアダルトサイトがセックスの教科書になっている」と警鐘を鳴らすのは、全国の学校で性教育をする河野産婦人科クリニック(広島市)院長の河野美代子さん(72)だ。河野さんはAVの影響を受けた男性の乱暴な行為で、性器にけがをした10~20代の女性を多く診てきた。AVではコンドームを使わず膣(ちつ)外に射精する描写もよくあるが「これでは避妊できない」。これまでに河野さんのクリニックを受診した性交経験のある10代の女性709人のうち、膣外射精をされた人の3割近くが妊娠していた

 厚生労働省の「衛生行政報告例の概況」によると2018年度、20歳未満の人工妊娠中絶件数は1万3588件。15歳未満も190件と、心と体に負担がかかる手術を受けている若い女性が少なくないことが浮き彫りになった。

中学校の保健体育は「性交」を扱わず

 性教育はこうした事態を避けるのに不可欠だ。しかし、中学校の保健体育の学習指導要領では、妊娠に至る行為や避妊は扱わないとしている。「寝た子を起こすな」といった批判は根強いが、河野さんは「きちんと教え、子どもを守るのは大人の責任」と強調する。

 妊娠した小学5年の女児を診察した時のことだ。相手は中学生。女児は自分が性交渉をしたという事実さえ理解しておらず、周囲も妊娠したことに気付かないまま中絶できる期間が過ぎていた。そのまま出産。生まれた赤ちゃんは特別養子縁組をした家庭で育てられることになった。

「生まれてくれてありがとう」を添えて

 「性教育は、性に対して抵抗感のない3~10歳のうちに行うといい」と話すのは、元看護師・のじまなみさん(38)=埼玉県和光市=だ。「お母さん!学校では防犯もSEXも避妊も教えてくれませんよ!」(辰巳出版)の著書があるのじまさんは、親子を対象に「とにかく明るい性教育・パンツの教室」を各地で開く。

 性について話しやすいのは互いに裸になるお風呂の時という。のじまさんらは、水着で隠れる部分と口、胸を合わせて「水着ゾーン」と呼ぶ。「『水着ゾーン』は大切な場所」と伝えると子どもも理解しやすい。「そこを無理に見たがったり、触りたがったりする人は危険だし、自分もそんなことをしてはいけない」と教える。万が一何かされたら逃げる、必ず大人に伝えるよう言い聞かせるといい。

 「命の大切さや相手を思いやる心をはぐくむことができるのが、性教育」とのじまさん。自身も3人の娘たちに、妊娠・出産の仕組みを説明しながら「生まれてくれてありがとう」という言葉を伝えたという。

 

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