学校プールの廃止が増加 水泳授業は校外の屋内プールで 理由は「猛暑、見られない配慮、コスト削減」

加藤健太、今川綾音、寺本康弘
子育て世代がつながる
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今年の夏で役目を終える葛飾区立水元小学校の25メートルプール

 今年もプールの季節がやってきた。コロナ下で水泳の授業を中止した学校がほとんどだった昨夏から一転、今夏は感染防止の措置を取りながらの実施を模索する学校も多い。「コロナ下でプールが安全にできるか」に保護者の関心が集中する一方で、老朽化した学校のプールを改修・新設せず、公営や民間の屋内プールでの水泳指導に切り替える自治体が出てきている。維持管理費の削減や、天候に関わらず授業ができる利点はあるが、移動中の安全確保などの課題もある。体育指導に詳しい専門家は「いざという時に命を守る手段にもなる泳力をつけるのは義務教育の重要な役目。自治体は必要な学校設備としてプールを設置する方向で考えてほしい」と指摘する。

【関連記事】学校プールの廃止や民間委託を進めていいのか? 体育指導の専門家が訴える「義務教育で学ぶべき水泳の力」

葛飾区は本年度以降、プール造らない方針

 東京都葛飾区教育委員会は昨年12月、2021年度以降に改築する小学校にはプールを造らず、校外の室内温水プールを水泳授業に使う方針を決めた。葛飾区教委は「以前よりも夏場が猛暑となるなど、屋外プールでの水泳指導が思うようにできなくなってきている」と理由を説明する。

 今秋からの学校改築に合わせ、校庭の一角にある25メートルプールの取り壊しが決まっている区立水元小学校など、現時点でプールを造り直さない方針が決まっているのは3校。プールがない学校は、区営のスポーツセンター2カ所と、民間のスポーツクラブ10カ所のどこかに徒歩かバスで移動して授業を受ける。施設のインストラクターも教員とともに子どもたちの指導にあたる。水元小の児童たちは来年度から、学校から約1キロ離れた区営スポーツセンターの温水プールを使う。

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葛飾区が小学生の水泳指導で使う水元総合スポーツセンターの温水プール(葛飾区提供)

 屋外にある学校プールは、熱中症に気をつける必要があるほか、雨天や水温が低いために授業ができないなど不安定な要素がある。日焼け予防や、水着姿を外部から見られないよう配慮するなど学校側に求められる負担も大きくなっている。「時代の流れを踏まえ、学校のプールがどうあるべきかを自治体として考える時に来ている」。葛飾区教委の学校施設担当、森孝行さんはこう話す。

校外利用なら、1校で年間260万円が削減

 葛飾区教委はコスト面のメリットも挙げる。学校プールを作り直して使っていくよりも、利用料を支払って屋内プールを使う方が、1校につき年間約260万円を抑えられると試算する。

 区立小に通う4年生の子がいる母親(46)は「炎天下のプール授業で具合が悪くなった子もいたと聞くので、屋内にシフトするのは時代に合っているのでは。インストラクターに習うことができるのも良いかも」と理解を示す。一方で「移動に時間が取られ、プールに入る時間が短くなってしまわないか」と心配も口にした。

授業自体をなくす、指導を民間スクールに委託…各地で広がる動き 課題は移動手段と成績評価

 学校プールの廃止は各地で進み、授業自体をなくす自治体も出てきている。
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葛飾区立水元小学校のプール(左下)

海老名市、着衣泳ができなくなり「残念」

 神奈川県海老名市は、2011年度までに19小中学校のプールを全廃した。2006年に埼玉県内の市営プールで小学生が吸水口に吸い込まれて死亡した事故を受け、学校プールの改修を検討した際、財政面から今後の維持管理は難しいと判断。市営の屋内プール4カ所に徒歩やバスで移動して授業を行う。移動があっても授業時間が確保できるよう授業は2~3時間の連続としている。

 海老名市教委の担当者は「屋外プールでは6~7月の間に授業をしなくてはならなかったが、5~10月までに広げられたことで、授業計画通りに進めやすくなった」と利点を挙げる。ただ、着衣泳は実施できなくなり、「安全面から有意義だったので残念」と話す。

 埼玉県加須市は少子化を理由に2021年度から小学校のプールの統廃合を進める。廃止する小学校の児童は、存続する近くの学校か民間のスイミングスクールで授業を受ける。中学校でも2022年度から水泳の授業を取りやめる。隣接の埼玉県羽生市も2020年度に全中学校のプールを廃止した。民間プールの利用を検討したが、想定よりも費用がかかりすぎることや移動時間を考慮して断念したという。

千葉市は民間に委託「プロの指導で上達」 

 指導も含めて、外部施設に委託を始めた自治体もある。千葉市は2019年度から、試験的に民間のスイミングスクールの利用とスクールの指導者による授業を開始。本年度は9校で実施予定で、児童の泳力や教員の負担軽減の効果を検証するという。千葉市教委は「多くの児童が意欲的で、プロの指導で上達を実感している」と手応えを感じている。

 一方、課題は成績評価と移動だ。千葉市教委保健体育課の担当者は「学校とスクールでは評価の基準が違う。判断基準の作成を綿密にする必要がある。バス移動の場合、交通量の多い地域で渋滞し、時間通りに移動できないときもある」と話す。

 スポーツ庁によると、小学生と中学2年生までの学習指導要領では、水泳授業は必修となっている。民間施設の活用について、担当者は「安全面に考慮し、指導要領に示された内容を適切に実施していれば問題ない」としている。

水泳は「命を守る」義務教育 民間任せには不安も

筑波大付属小学校 体育研究部の平川譲教諭の話

 水泳学習は義務教育の教育課程に入っており、プールを設置・維持する義務は本来、学校設置者の自治体にある。水泳教室に行けない子どもにとっても、いざというとき命を守る技能を身に付ける機会だ。一部の自治体で指導を民間任せにした場合、教員が指導経験を積めず、他自治体に異動した際に困るといったケースが出てくることも懸念される。

すくすくボイス

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コメント

  • 匿名 より:

    水泳の授業で水の怖さを学ばないのは良くないと思う。

  • 匿名 より:

     水泳学習は条件的に極めて難しい内容を含んでいると思います。学校教育から切り離し、民間や公共の施設に委ねた方が効果的効率的に取り組めるのではないでしょうか。ただでさえ色々なことが学校に安易に丸投げされ、現場の先生方は四苦八苦されているようです。逆に水泳を学校から切り離すことで、僅かでも学校にゆとりが生まれることになれば良いですね。

  • 匿名 より:

    人員不足、維持管理費(掃除、水量使用分払い)、安全面を考えると、賛成です。

  • 匿名 より:

    この記事を拝見すると、なにかしら「カネ」の事メインにしか役所の奴らは考えていない。
    今の時代、我々の子供の頃より体を動かして遊ぶ事もしないので、体力や運動能力も低下しており、全身運動である水泳の授業は尚更必要ではないのか?
    それに水泳の授業をせず、任意で民間の水泳教室や外部委託にした場合、ここにもカネのある家と無い家の格差が出て来るのではないのか?
    (神奈川の某小学校が有名だが!)
    後、障害児の教育にも欠かせないモノがあり、水泳教育を無くすのも問題ではないのか?
    見方によっては、大人の考え中心で子供の人権を無視している感じである。

  • 匿名 より:

    馬鹿だね。
    団塊世代大量退職した時に、採用試験に体育実技を入れなかったから泳げない先生だらけになったから、プール教室の先生来てくれと素直に言えばいいのに。
    あれよ?津波で助かったの目を開けて泳げる子たちなの全くわかってないね?
    そして、海老名?あそこは昔からプール大嫌いな奴らが仕切ったから、もともと夏休みのプール開放すらないどうしようもない。
    あと川崎はいにしえの教員採用試験から水泳実技がないから救いようがない。泳げない先生は川崎行け!ってね。川崎からの転校生は泳げないで有名だったし可哀想だったよ。以上

  • 匿名 より:

    プール監視やライフセービング、公立学校での水泳指導補助を行う者です。

    水泳の授業でまず必要なのは、○○m泳げたとかそういう事ではなく、水の危険性や楽しさを正しく理解し、水に囲まれたこの国で水と上手に付き合う術を学ぶ事です。

    今の教育は子供達をリスクから遠ざけるばかりで、リスクとの向き合い方を学ぶ機会が失われています。

    この国は水泳を教える前にウォーターセーフティをもっと教えるべきだと思っています。それはスイミングスクールの仕事ではなく、義務教育の役割です。

  • 匿名 より:

    中学校の水泳部顧問を行った者です。
    施設、金といわれれば、仕方ないです。ならば全ての部活も同様に行うことが必須です。

    顧問経験で全く泳げない生徒が入部したこともありましたが、1年の最後の大会には、賞状を取りました。私の技術指導だけでなく、他の部員達にも教える事も指導しました。2年からはリレーメンバーにも、人数合わせでなく、いつでもだれでもいけるメンバーになりました。水泳だけでなく、人間関係、自分で考え、ベストな方向性にすすめることをクラブで考える事も行いました。時には、学力の事もクラブ内でも行い、成績の事にも触れました。

    命や安全面やふざけることの話もたびたび行いました。授業には、授業者以外にも体育館教師や数人監視教師が居ますが、私は授業が空きであれば、所属学年の授業
    には、他の教師に代わり監視にいきました。生徒特に部員の様子をみて部活でもいかしていました。時にはアドバイスもしました。
    また部員と授業者には万一、人出が必要ならば、部員を使ってくださいと話をして、実際、部員が役に立ったとも聞いています。部員も自身の勉強になった様です。
    更に、授業者の指示が聞こえなかったり、理解できない生徒がいると、私が確認や伝達も行いました。

    学校の屋外プールは真夏は連日水温が40℃越えです。水分補給、熱中症を気をつけながら、顧問として考えたり、私物を使いました。
    何度も屋内公認プールの設置を管理職に話しても、金の問題でノーという回答でした。

    勤務校によっては、水泳ができない教師も居ました。個人的には学校にプールは必要だと思います。近年は、無くなりましたが、防火水槽の意味合いも在りましたよね。
    民間に委託すると、授業料や水着も考えないといけないのでは? 民間のスクールに通っている生徒もいるから、その点はどうかも検討課題になるのでは?
    なお、私は、体育教員では、ありません。

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