コロナでいつもと違う夏、水辺の事故を防ぐオンライン講座 ドラマ形式で子どもが積極的に学べます

子育て世代がつながる
 新型コロナウイルスの感染対策として密集を避けるため、今年の夏は自治体が海水浴場の開設を見送る動きが広がっています。また、再開した学校でも、プールでの水泳授業の中止や縮小が相次いでいます。こうした状況は子どもたちが水の事故に遭うリスクを高めると専門家は指摘します。安全への意識を高めてもらおうと企画されたオンラインセミナーに親子で参加し、この夏の心構えを学びました。
写真

セミナーはオンラインで動画教材を使いながら進められた。分割画面の左上が講師の松本貴行さん

ライフセーバーがいない海 万が一の時に助けを呼べない

 「この夏は海水浴場が開かれないという話を聞いたことある?」

 14日に開かれた「守ろう!いのち 学び合おう!水辺の安全セミナー」で、講師の日本ライフセービング協会副理事長の松本貴行さんはまず、参加した子どもたちにこう問いかけた。

 密集を避けるため、すでに自治体が海水浴場を開設しないと決めた場所も多いが、海水浴場として開かれていなくても、遊びに来て泳ぐ人がいる可能性はある。例年ならライフセーバーや海の家の従業員などが来場者の安全に目を光らせるが、こうした人たちがいない状況に。万一、おぼれたり、熱中症などで具合が悪くなったりしたときに、助けを呼べない状況になる。

 また、水泳授業も、着替え時などの感染リスクを避けることや、授業前の健診の時間が確保できないことなどを理由に、実施を見送ったり、普段より縮小したりする学校もある。松本さんは「みんなが水に慣れて、安全についても学んでから夏休みを迎えるのとはちょっと違う年になるけれど、自分に準備できるのはどういうことかな、と考えてもらえたらと思います」と語りかけた。

友達が海に落ちたら? ドラマとは違って静かにおぼれる

 セミナーは友達同士で護岸で釣りをしていたら、一人の子が足を滑らせて海に落ちてしまった、という設定のドラマ仕立ての映像を見ながら進行。海に友達が落ちちゃったら…という場面を想像した子どもたちからは「やばい、どうしよう」「どうやって助けよう」などの声が。「実際にその場に自分がいたら、という気持ちを想像することが大事。自分で飛び込んで助けに行こう、という人はいなくて良かったです」と松本さん。「ドラマなどでは、『助けて~!』と大声で呼んだりするシーンがあるけど、実際には鼻や口に水がたくさん入ってくるので声も出せないことが多い。静かにおぼれてしまうので周囲も気づきにくいということを知って」と解説した。

写真

日本ライフセービング協会が子ども向けに製作した冊子

 救助の仕方も具体的に習った。竿や長い棒などつかまるものを差し出すときには、腹ばいになるなど自分が引っ張られてしまわないような姿勢を保つことや、ペットボトルを投げ入れるときは、中の水を少し残して投げ入れたほうが、風などに飛ばされずに済むことなども教わった。

浮くものをおなかの上に ライフジャケットは正しく着用

 水に落ちてしまった人は、ペットボトルや保冷ケースなど浮きになるものを投げ入れてもらってつかんだら体の力を抜いて、ラッコのようにおなかに乗せて浮くようにする。松本さんは「体の中の浮き袋は肺です。大きく息を吸ってゆっくりはくように」と助言した。

 ドラマの中では、ライフジャケットを着た学生が男の子を助けようとして飛び込むが、きちんと着用していなかったために、危険な状況に。松本さんは、体に合ったサイズを選び、チャックを閉めたり、股下のベルトをしっかり留めたりといった正しい着用方法で、体に密着させることが大切、と訴えた。

写真

子どもたちにはあらかじめ郵送された修了証も手渡された

 セミナーの最後、松本さんは子どもたちにライフセーバーの仕事は何だろう、と質問。子どもたちからは「おぼれている人を助ける」という声が多く上がったが、「おぼれる前に、大丈夫ですか?と声をかけ、皆さんを守ることがライフセーバーの大切な仕事です。海などで困ったことがあったらすぐに相談してくださいね」と呼びかけていた。

息子を亡くした吉川さん「子どもが学び合うことが大切」

 セミナーは日本ライフセービング協会と吉川慎之介記念基金の共催で、小学1年生から中学2年生までの子ども15人が参加した。基金代表理事の吉川優子さんは、2012年7月に5歳だった一人息子の慎之介君を川の事故で亡くした後、水辺の事故で失われる命をなくしたいという思いで、ライフジャケットの普及など子どもの安全や事故予防に関する情報や知識を広める活動をしている。今回も「水辺の安全の知識を子どもたちに伝えたい」と考え、動画教材を活用したオンライン講座を企画した。

写真

吉川優子さんも、画面越しに「みんなが安全に元気に過ごしてくれることがお父さん、お母さんにとってうれしいことです」と呼び掛けた

 わが家の小学4年の次男は、「え~どうしようかなあ」と参加を渋っていたが、映像を見ながらクイズ形式で進められる講座が思っていた以上に楽しかったようで、積極的に参加していた。学校でかつて習っていたことを思い出す機会にもなったようで、隣にいた私に途中で「解説」もしてくれた。一方的に話を聞く形よりも、自分の中に残るものは多いだろうと感じた。他の保護者からも「親子でコミュニケーションを取るきっかけになった」「教わったことが頭の中に残っていればいざというときに役に立ちそう」などの感想が出ていた。

 吉川さんは「これまで開いてきた大人向けの講座では、子どもをどう守るか、という視点だったが、子どもたち自身が学び合おうとする姿に感激し、学び合う大切さに気づかされた。子どもに伝えていく活動も重ねていきたい」と話した。

 セミナーで使われた教材は日本ライフセービング協会協会のホームページで見ることができる。

すくすくボイス

この記事の感想をお聞かせください

いただいた投稿は、東京すくすくや東京新聞など、
中日新聞社の運営・発行する媒体で掲載させていただく場合があります。

あなたへのおすすめ

PageTopへ