飲食店のアレルギー表示 ルール作りを求める声 現状は店任せ…誤食が関わることも
店で確認すると肩身が… 特に困る旅行先
「外食で注文する際は、店員に原材料を確認する。でも、後ろに大勢並んでいると肩身が狭いし、店が忙しそうなときは店員に迷惑そうな顔をされることもある」。東京都調布市の藤田雄太さん(40)は言う。
小学4年の長男(10)は、卵や魚のアレルギーがあり、意識障害など重篤な症状が出る「アナフィラキシーショック」を起こしたこともある。外出時も症状を緩和する自己注射薬「エピペン」が手放せない。
よく行く近所の店なら長男が食べられるメニューを把握できているが、困るのが旅行先などでの食事。飲食店で店員に原材料を尋ねたら「分からない」と言われ、入店を諦めたこともある。藤田さんは「アレルギーのある人や家族の苦労、生きづらさは、世間ではまだまだ知られていないのでは」と話す。
外食では表示義務なし 43%が誤食経験
容器で包装された加工食品の場合、アレルギーの原因となる食品のうち、特に発症頻度が高く症状が重くなる卵、牛乳、小麦、エビ、カニ、そば、落花生(ピーナッツ)の7品目については、食品表示法に基づき表示義務がある。ゴマや大豆など21品目は、表示が推奨されている。
一方で、飲食店などの外食に関しては、法律上、店側にアレルギー表示の義務はない。ハンバーガーチェーン「モスバーガー」のように、ホームページなどでメニューの原材料を確認できる店も増えてきているが、まったく表示がない店もあり、それぞれに対応が任されているのが実情だ。
そのため、外食時に誤ってアレルギーの原因食品を食べてしまう人も少なくない。食物アレルギー患者・家族らでつくる8団体が昨年8~9月、患者ら1141人から回答を得たアンケートでは、43%の人が外食時に原因食品を誤って食べた経験があった。そのうち、症状が出て医療機関を受診した人は57%。症状が重く入院に至ったケースも15%に及んだ。
「国主導で表示ルール作りを進めるべき」
こうした実態を受け、患者団体のメンバーらは昨年11月、外食などでのアレルギー表示について、ルール作りを求める要望書を消費者庁に提出した。その団体の一つ、NPO法人「アレルギーの正しい理解をサポートするみんなの会」(東京)理事長の前田えりさん(59)は「食物アレルギーは命に関わり、本人や家族は普段から食事に対して強いストレスと不安を抱えている。『外食での誤食は自己責任』とするのではなく、防ぐためにはどうすればいいのか、考えるきっかけにしてほしい」と訴える。
アンケートを監修した昭和大医学部小児科学講座教授の今井孝成さん(51)は「外食時の誤食で、いつ重大な事故が起きてもおかしくない」と指摘。「店側からは、対策や従業員教育をしたくても、どうすればいいのか分からないという意見もある。どのような表示方法が望ましいのか、専門家や患者・家族、外食産業の意見を交え、国主導で表示ルール作りを進めていくべきだ」と話す。