東京都の待機児童、1970年以降で最少の300人 「受け皿」急増による保育環境の悪化が課題
土門哲雄、奥野斐 (2022年7月29日付 東京新聞朝刊)
東京都は、今年4月1日時点の待機児童数が300人で昨年より669人減ったと発表した。5年前(2017年)は8586人だったが、近年急速に減り、統計を取り始めた1970年以降で最少を更新した。都の担当者は「受け皿の整備が進んだ」としたほか、新型コロナウイルスの感染拡大による預け控えや育児休業の定着も要因に挙げた。
最多は町田市の75人
発表は27日。都によると、認可保育所の施設数は3569(前年比92増)で、5年前から1000余り増えた。定員は31万9510人(前年比6146増)で5年前から約7万2400人増えた。認証保育所の施設数は前年比36減の464、定員は1189人減の15529人。認可保育所への移行が進んだという。
待機児童がいる自治体は28。多い順に町田市の75人、国分寺市の25人、狛江市の18人。前年比で待機児童の減少が大きかったのは中央区の85人、小平市の83人、三鷹市の70人。待機児童がいない自治体は前年の26から34に増えた。
保育所などの利用を申し込んだ人は32万362人。就学前児童全体に占める割合は年々増え、53.8%。
23区内は園庭のない施設が増加 受け皿整備の予算を「保育の質」に振り向けるべき
待機児童は減っているものの、園庭のない保育所の増加や保育士不足など、保育の質の低下を懸念する声は消えない。依然、希望する保育所に入れない「隠れ待機児童」も少なくない。
保育所急増で保育士の取り合いも
「保育園を考える親の会」が毎年、東京都内や政令市など主要な100自治体に実施している調査では、認可保育所の園庭保有率は80.3%(2015年度)から、70.6%(2021年度)に減少。中でも東京23区では園庭がない保育所が増えている。また、保育所の急増で保育士が取り合いになっている状況もあるという。
同会顧問の普光院亜紀さんは「急な整備により保育環境が犠牲になっている施設もある。都は今後、受け皿整備の予算を保育士配置など『質』に振り分けていくべきだ」と話す。
親の会には、特に育休明けの1歳児で認可保育所に入れず、やむを得ず認可外施設に預けたり、育休を延長したりしたという声も寄せられているという。
また、今年に入り、大手保育事業者による補助金の不正受給が都の指導検査などで明らかになった。だが、都の指導検査実施率は認可外施設も含めて全体の5.2%(2020年度)と低い。普光院さんは「ほとんど入れていない。監査を強化しなければならない」と指摘した。
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