みんなが楽しめる運動会って? 集団が苦手な子、運動が苦手な子も… 新しい競技を考えるのも自由なはず

海老名徳馬 (2022年10月7日付 東京新聞朝刊)
 気候がよく安定している秋は、運動に適した季節です。運動会や体育祭がある学校も多いでしょう。楽しみにしている人も、運動が苦手でできれば参加したくない人もいるのでは。どんな運動会なら多くの人が楽しめると思いますか。

海軍幹部を育てる寮で始まった運動会

 教材紹介サイトなどを運営するARINA(アリナ)株式会社の今年3月の調査では、運動会で子どもが好きな競技の1位は玉入れで、2位はリレー=上のグラフ。教育研究家の妹尾昌俊さん(43)は「運動に親しむ、日ごろの体育の成果を見せる、異なる学年でも協力する、などの意義がある」と話す。

 運動会はもともと、海軍の幹部を育てる寮で始まったとされ、集団での活動や一体感が大事にされるともいわれる。ただ、妹尾さんは「応援合戦やダンスなどは一生懸命練習して頑張るのが好きな子もいるが、集団に合わせるのが苦手な子には負担にもなる」と指摘する。運動能力を競う側面もあり、重圧を感じる子も。

やってみたい競技「未来の運動会」で

 国が定めた学習指導要領に「運動会」という言葉は出てこないという。妹尾さんは「やってもやらなくてもいいのだから、もっと柔軟に内容を見直してみては。(テレビ番組で人気の)『逃走中』をやりたい子もいるかもしれない。子どものための運動会なのだから、子どもたちが意見を出しあい考えてみて」と呼びかける。

 実際、新しい競技をつくって楽しむ動きもある。一般社団法人運動会協会が進める「未来の運動会プロジェクト」は、まず参加者がやってみたい競技のアイデアを出し合い、できた種目で実際に遊ぶイベント。同協会の犬飼博士理事(51)は「開くたびにいろいろなアイデアが出る」と話す。

 スマートフォンを入れたボールをリレーのように手渡ししながら大縄跳びをし、スマホの歩数計の機能で数える揺れの回数が少ないチームが勝つ競技や、いろいろな種類や大きさに切り分けた果物をはかりに載せて、決められたグラム数に近づける競技も。「できた競技が気に入ればその後も続いていく。野球やサッカーもそうやって生まれてきたと思う」と犬飼さん。

福島県では運動会を行わない地域も

 学校などの運動会の内容も、地域で違うという。例えば福島県には運動会を行わない地域があり、宮崎県の一部では、板に載せたボールなどをてこの原理で跳ね上げて相方がかごで受ける「左近太郎」という種目が人気を集める。

 近年は、午前中で終わることが増え、組み体操など危険が伴う競技をやめる学校も。コロナ下で簡素化する傾向も強い。犬飼さんは「運動会は基本的に自由なもの。参加しない、やめるという選択肢も含めて、新しい運動会をつくりたい」と将来の姿を思い描く。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年10月7日