「子どもだけの留守番や外出は虐待」自民の条例改正案に抗議続々 廃案求める署名もスタート どうなる埼玉県議会
自民「意識改革のための理念条例だ」
6日の委員会で改正案が審議され、自民と公明党の委員の賛成で可決された。13日の本会議で採決される。
改正案では、小学3年以下の子どもを自宅などに残して外出することを保護者などに禁じる。自民側は4日の本会議の質疑などで、子どもたちだけで公園で遊ばせたり、学校の登下校をさせたり、高校生のきょうだいに預けて出かけたりすることも違反になると説明。小学4~6年についても「努力義務」とし、県民には放置されている子どもの通報義務を課すとした。
自民側は、熱中症や火災、誘拐などの危険性を挙げ、どこでも短時間であっても「生命、身体に危険がなく、養護者がすぐに駆けつけられる状況」でなければ放置とし、罰則規定はないものの「放置は虐待だ、と意識改革を進めるための理念条例だ」と強調した。
学童の待機児童も解消されないのに…
改正案の方針は、9月に議会運営委員会でも説明されたが、他会派の議員は「車内への置き去りなどの対策と思っていた」という。4日の説明に「ここまで禁止対象が広いとは」と驚きの声が上がった。自民党内からも「理念は賛成だが、一生懸命働くひとり親や共働きの人を追い詰めることになる。『埼玉県で子育てはしたくない』とならないか」と懸念も出ている。
改正案は、子どもを放置しないために、県に保育所や学童保育の整備を求めるが、昨年度の小学生の待機児童は1554人。県幹部からも「施行日(2024年4月1日)までの解消は難しい」「条例順守は難しく、理念すら守られなくなるのでは」と声が上がる。
保護者は反発「仕事やめろと言うのか」
改正案を知った埼玉県内の保護者らは、成立を防ごうと6日から署名活動を始めた。インターネットの署名サイト「Change.org」に立ち上げたページ「10月13日可決予定!STOP! 埼玉県 子どもだけの登下校禁止条例!!」で、改正案を可決しないよう求める署名を集め、本会議前日の12日に自民党県議団に提出する。
発起人の野沢湖子(ここ)さん=東松山市=は「通報義務で監視され、外で子どもを遊ばせられなくなる。保護者に仕事をやめろと言うのか」と不安を吐露。「家庭に複数の子どもがいたら、子どもの数だけ大人がいないと常に見守ることはできない。他人に見守ってもらうといっても、他人に預ける方がよっぽど怖い。どうして県民の声を全く聞かずに決めようとしているのか」と疑問を投げかけた。
委員会では反対の声もあったが…自民・公明の賛成で可決
放置の定義は「定めない」
改正案は自民が先月、議会運営委員会で他会派に方針を示し、その後共産党県議団が修正を求めた。4日の本会議に改正案を上程した自民の田村琢実団長は「他党の要請は団内の議論に影響していない」とする。
6日の福祉保健医療委員会で小久保憲一氏(自民)は、改正案を「子どもの安全を優先する意識改革と環境整備推進を狙った理念条例」と説明。放置の定義は「範囲が狭まるので定めない」とし、待機児童解消など環境整備の実現を疑問視する声には「指摘の通りだが、県に適切に運用してもらう」と答えた。
県民会議の修正案は否決
これに対し、県民会議が修正案を提出。改正案が「義務」とする小学3年生以下を「努力義務」とし、禁止対象も長時間の置き去りなどに限った。共産も「過度な負担で養護者(保護者など)を追い詰め、近隣住民に疑心暗鬼を広げる」と県民会議案に賛成したが、否決された。
民主フォーラムは「現状で施行すれば社会や行政に大きな混乱がある」と継続審議を求めたが、否決。公明は、施行後に県民の実情に合わせた再改正の検討を求めるとして改正案に賛成した。
埼玉県側も懸念を表明
委員会で意見を求められた金子直史県福祉部長は「理念は理解できる」とした上で、順守が難しく「理念自体も守らなくなるのではないか」と懸念を表明。閉会後に取材に応じ、県としての環境整備施策は「一朝一夕には難しい」とし、禁止や通報対象の線引きについては「条文を精査して改めて検討する」と話した。
福祉保健医療委員会は定数12で、会派構成は自民7、公明1、民主フォーラム2、共産1、県民会議1となっている。
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