親が見守る自主保育「原宿おひさまの会」がピンチ 来年度は3組だけ…継続を模索中 野外で子どもの感性を大切にしたい
50年の歴史 渋谷区長は1期生
3月のあるおだやかな平日の朝。親子5組が活動拠点の代々木公園に集まってきた。この日の当番の親が「朝のあいさつするよー」と声を掛けると、子どもたちの「おはようございます!」の元気な声が響いた。
「原宿おひさまの会」は50年ほど前、地元の小児科医だった毛利さんが、元気のない子どもたちを見て「この子たちに必要なのは外遊びでは」とソーシャルワーカーの石川由喜夫さん(現・世田谷区の保育グループ「あそびの会」代表)らと立ち上げた。渋谷区長の長谷部健氏は1期生。
対象は0歳~就学前。室内遊びで体力を持て余してしまう子や、屋外で子どもを思いきり遊ばせたい親らが平日の午前9時半から午後2時に代々木公園に集まり、親の当番制で子どもたちを見守っている。参加するのは専業主婦や自営業の親が多い。
自然の中で「好き」に向き合う
会のモットーは、子どもの興味を大切に、大人はできるだけ口出ししないこと。チャンバラごっこや雨の日に屋根から流れ落ちる水に子どもが打たれているとき、普通なら「それはだめ!」と言ってしまいそうなところを大人はぐっと我慢して子どもの世界を見守る。決まっているのは朝、あいさつしてマラソン、体操をすることと、昼食の時間、終わりの時間のみ。その他は子どもたちの自由時間にしている。自由な分、けがにも気を使う。応急手当ての方法や近隣病院のリストを会のしおりに記載し、安全についての意識を共有している。
青山学院大学コミュニティ人間科学部教授で自主保育について研究する菅野幸恵教授は「時間や空間が区切られない中で自分の『好き』に存分に向き合うことができる。それが後々、子どもたちの知的好奇心につながっていく」という。「自然の中で一から遊びを作り出すので発想力が育つ。異年齢で遊ぶのでコミュニケーション能力が鍛えられる」。男児2人を通わせてきた今井愛弓(あゆみ)さん(40)は話す。
母親たちも子育てに同じ思いを持つ親とつながることで、孤育てに陥らず、困ったときに助け合える関係を築けているという。「ほかのお母さんの出産時に上の子のお弁当を親で順番に作ったり、送迎したり。サポートする方にとってはそこまで大変でないことでも、される方にとってはすごく身にしみること。ここぞという時に助け合える関係はとても貴重」と小5の長女から4歳の次男まで11年にわたり会に通う岡田教子さん(45)はいう。
活動は縮小傾向…でも続けたい
コロナ前は20組ほどの親子が参加していたが、本年度は6組、来年度は3組になる。岡田さんは「幼保無償化や少子化、働く母親の増加など原因はいろいろ考えられる。コロナでリモートワークが進んで、自然の中で子育てしたい人たちが東京にこだわらなくなったのもあるのでは」とみる。メンバーは、一時は活動休止も考えたが「必要とする人が来られなくなるのは悲しい」と最近、継続を決めた。
費用は運営費として年間1000円程度で、イベント時などに必要に応じて集金する。継続参加の際に要保険加入。問い合わせは ohisamanokai.h@gmail.com へのメールで受け付けている。活動は「原宿おひさまの会」のインスタグラムでも紹介している。
(4月4日追記)最後の段落の運営費は「1学期5000円を必要に応じて積み立て」でしたが、2024年度から変更になったため、修正しました。