元体操のお兄さん 小林よしひささん 娘の誕生で「おかあさんといっしょ」最後の1年が特別なものに

(2020年2月23日付 東京新聞朝刊)

小林よしひささん(坂本亜由理撮影)

厳しい母が姉に料理指導 「僕にもやらせて」

 父と母は共働きで、会社員の父はおとなしい性格。パート勤めの母がパワフルな人で姉2人と僕を厳しくしつける担当でした。母から学んだことの1つが料理。子どものころ、母は夕方、帰る前に家に電話をかけて姉たちに「お米をといで」「タマネギをみじん切りにして」と夕食の下ごしらえを指示していました。

 見ていた僕は自分から「僕にも何かやらせて」と言ったそうです。母の隣に立ち、タマネギをあめ色になるまで炒めたり、スーパーで「キャベツは重ためがいい」と新鮮な野菜の選び方を教わったりしました。

原点は母が見せてくれたジャッキー・チェン

 スポーツが好きなのは剣道とバスケットボールをやっていた父の影響ですが、今の仕事につながる大きなきっかけを与えてくれたのは母でした。幼稚園児の時、ある土曜の夜に母は僕をテレビの前に座らせ、「映画を見せるから」と。始まったのはジャッキー・チェンさん主演のカンフーアクション映画「スパルタンX」でした。

 さらわれた人を助けるため主人公が闘う話で、「体を動かすのは格好いい」と発見した気分に。父に似ておとなしい性格でしたが、体を動かすことは好きで、社宅の芝生に転がって遊んでいました。その姿を見て、母はこの映画を気に入ると思ったようです。その後、外での遊びは漫画の影響で忍者の修業ごっこに変わり、小学生になると、休日は家族と野外のアスレチックに出掛けました。

オーディション付き添いが…「君も」で合格

 地域で開かれていた体操の教室にも通い、5年生から剣道を始めました。最初は基礎を身に付けるため、すり足の練習ばかり。冬は寒いし、逃げ出したいと思ったことも。送り迎えをする父は何も言いませんでしたが、母に「続けなさい」「ちゃんと行きなさい」と言われ、続けるうちに楽しめるようになりました。

 大学の助手時代、「体操のお兄さん」のオーディションに学生の引率でついていくだけの予定だったのですが、教授に「君も」と勧められ、受けることに。選ばれたと連絡が来た時は驚きました。母も驚いた様子でしたが、「頑張ってね」と背中を押してくれました。番組の公演には家族で来てくれています。

娘もスポーツ得意かも 跳ぶ力が強いんです

 2016年に結婚し、2018年12月に初めての娘が生まれました。もともと子どもは好きでしたが、娘がとにかくかわいくて。共演する子どもたち一人一人が、大切にされている宝物だと分かり、父親になって務めた最後の1年は特別な期間になりました。

 娘もスポーツが得意かもしれません。跳ぶ力や握力が強いからです。人とは違う何かをつかみ取り、自分で選んだ道を歩んでほしいですね。

小林よしひさ(こばやし・よしひさ)

 1981年、埼玉県生まれ。2004年に日本体育大を卒業。同大助手を経て2005~2019年、NHK・Eテレ「おかあさんといっしょ」の第11代「体操のお兄さん」を最長の14年務めた。テレビで活躍するほか、YouTubeの「よしお兄さんとあそぼう!」で動画を配信中。