俳優 安藤玉恵さん 人を楽しませるのが好きな父 兄の野球チームには揚げたてのとんかつ

五十住和樹 (2022年3月27日付 東京新聞朝刊)

俳優の安藤玉恵さん=東京都千代田区で(木口慎子撮影)

人望の厚い兄 何を言っても受け入れてくれる

 兄は東京都荒川区の実家でとんかつの店をやってます。2つ上で、優しくて運動が得意。人の話をよく聞く。何を言っても受け入れてくれる。人望が厚くてまとめる力もあるから、小学校から続けていた野球ではキャッチャー。キャプテンを務めたこともありました。

 私が早稲田大で演劇を始めたときは結構面白がってくれて。実家の広間でよく皆で集まってお稽古とかしてたんですが、全員のご飯を作ってくれたり。お店の仕込みに使う車を出してくれて、小道具を運んだりしました。

 私の舞台もよく見に来てくれます。最初は「何を見ても妹にしか見えない」と恥ずかしかったみたいです。ちゃんと作品の中の1人として見てもらえるようになったのは、最近じゃないかな。両親を早く亡くしたのですが、2人で頑張って看病や介護をしたので、絆がより深まったという感じがします。

頭をそり上げた父 手でとんかつ揚げた

 お父さんは新聞の連載に登場したくらい面白い人。とんかつ屋さんを始めた時に、広告のため自らサンドイッチマンをしてました。お客さんを楽しませようとして「熱い!」って言いながら手でとんかつを揚げたことも。私の中学校に遊びに来た時、頭をそり上げた面白い見かけも相まって、周囲の子が「ほら面白い人、来たよ」って。

 お兄ちゃんが高校3年の時の野球の試合で、「チームに揚げたてのとんかつを食べさせたい」って、球場の外で揚げてました。ガス台とか調理道具とか全部持っていって。屋台みたいな感じですよね。それをやることがエンターテインメントですからね。

 お父さんは英語を話すので外国のお客さんが多かった。私も入れてもらっていろんな国の人と「異文化体験」をしました。それがきっかけで私は外交官になりたくて、外国語学部に入った。お母さんは塾の費用など一生懸命お金を作って支えてくれた。その大学を辞めたいという、一番言いにくかった決断はお兄ちゃんに話しました。「まずお父さんに言った方がいいよ」というアドバイスで、外堀を埋めた。母は入学金も出してくれていて「それ、返しなさい」って怒ってましたね。

趣味はお墓参り ずっと話し掛けています

 私は今も、母の「不在」に慣れていないと思う。よく想像して、話し掛けたりするんですけど。亡くなってからの方が母に依存しているかもしれないですね。

 私の趣味はお墓参りなんです。両親の墓に行って、独りでずーっとしゃべってる。子育てとかいろんな大変なことを乗り越えた時、報告したくなっちゃう。私は母がいなくなってからも母に育てられているんだ、と思います。

安藤玉恵(あんどう・たまえ)

 1976年、東京都出身。主な出演作品はNHKドラマ「阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし」など。4月3日まで東京・下北沢の「ザ・スズナリ」で上演中の松尾スズキ作・演出の舞台「命、ギガ長スW(ダブル)」に出演。6月に東京で行われる本谷有希子作・演出の舞台「マイ・イベント」に出演予定。

コメント

  • 深夜食堂のマリリンみたいな大胆な役から、植物男子ベランダーの花店店長のお局みたいな役、阿佐ヶ谷姉妹等々、本当に面白くて個性的で幅広い役をこなせる見ていて飽きない女優さん。 樹木希林さんや市原悦子
    kikoakiko 女性 50代