入学シーズン間近!防犯教育の専門家に聞く「犯罪に遭わないために、親子で確認したいこと」

 小学生になると、子どもだけで行動することが多くなり、犯罪の被害に遭う危険性が高まります。警察庁の統計では、2018年に刑法犯罪の被害件数は未就学児が643件だったのに対し、小学生は9680件。とくに目立つのが強制わいせつ、暴行の被害です。20年以上にわたり、犯罪から命を守るための研究をしている、NPO法人「体験型安全教育支援機構」代表理事の清永奈穂さん(48)は、「子どもに自分自身を守る力を身につけさせて」と呼びかけます。清永さんが提唱する防犯のための2つのキーワードと、子どもたちに身につけてほしい力について教えてもらいました。

「就学前から発達に応じた安全教育を」と呼びかける清永奈穂さん

「ひまわり」「はちみつじまん」を覚えよう

 まず教わったのは、怪しい場所と怪しい人を意識できるようにするための2つのキーワードです。

 怪しい場所の特徴は「ひまわり」です。

 とりだけになるところ
 わりから見えない(見えにくい)ところ
 かれ道、わき道や裏道の多いところ
 ようされていない家(空き家)や公園など人が誰もいないところ

 怪しい人の特徴は「はちみつじまん

 しつこくなにかとなしかける人
 理由もないのにかづいてくる人
 あなたが来るのを道の端でじっとつめてくる人
 いつでも、どこまでも、いつまでもいてくる人
 あなたが来るのをっとっている人
 こういう人に会ったら「ん?」と注意

 清永さんは、「『ひまわり』のような場所には1人で近づかず、『はちみつじまん』のような人がいたらすぐにその場を立ち去って、保護者や先生、周囲の大人に伝えるよう教えましょう」と助言します。

「安全基礎体力」を養うための3つのポイント

 日頃の遊びや練習を通して、自分で身を守り、危機を自力で回避する「安全基礎体力」を養うことも大切です。ポイントを聞きました。

◇怪しい人から逃げるために「走る」

 過去に子どもが狙われた事件などを精査すると、子どもを追いかける犯罪者は、8メートルを過ぎると意欲をなくし始め、20メートルで完全にあきらめる傾向にあるそうです。清永さんは、年長くらいになったら、20メートルを全力で走って逃げ切るために日頃から練習することを勧めます。「ハンカチ落とし」や「だるまさんが転んだ」など機敏に動く遊びのほか、転がるボールを追いかけるだけでも全力で走る力をつけるのには効果的です。

20メートルを全力で。ダッシュの練習をする幼児たち(清永さん提供)

◇助けを求め、相手をひるませるため「叫ぶ」

 おなかの底から大声を絞り出す方法も子どもに伝えておきたいことです。体をくの字に折り曲げ、顔を前に出して叫ぶのがこつ。「子どもが大声で叫んでいるだけでは遊んでいる、と思われるかもしれないので、手足を振り回してジタバタする練習もさせてください」

おしりを地面に着けて、相手のすねを蹴る「ジタバタ練習」。逃げるすきができるという(清永さん提供)

 かくれんぼは「もういいかい」「まあだだよ」と大声で叫ぶ練習になるだけでなく、不審者が潜みやすい危険な場所を察知する力が付きます。ただし、「大人が事前に不審な人がいないか、安全確保をすること。そして、そういう隠れやすい場所に隠れている大人がいたらすぐ逃げる、近寄ってくる人は怪しいと思いなさい、と教えてあげて」

 防犯ブザーも大声の代わりになりますが、いざという時、使えるようにチェックしておくことが大切です。3カ月に1度は電池を確認し、ひもは手が届きやすい腰回りの位置に来るようにするのがベストだそうです。

大声を出す練習をする小学生(清永さん提供)

◇危機に対応するための「断る力」

 路上で声をかけられても「いやだ」「行かない」ときっぱり断り、保護者に「変な人に声をかけられた」と伝えられる力を育むことも必要です。

 清永さんは親子で誘いを断る練習をすることを勧めます。例えば、「お母さんが車にひかれて入院したので一緒に行こう」と誘ってきた人には「家に帰って確かめます」と答えること。「ジュース買ってあげるよ」と言われたら「いりません」といったように実際に受け答えをしてみるといいでしょう。清永さんは「自動車を運転している人から声をかけられることもあるので、絶対に乗ってはいけないことも伝えましょう」と話しています。

きよなが・なほ

 警察庁科学警察研究所(科警研)の初代犯罪予防研究室長である父の影響で、20代から犯罪、いじめ、災害から命を守るための研究に取り組む。各地の自治体、小学校などで独自の体験型安全教室を開催している。日本女子大学大学院博士後期課程在籍。著書に「犯罪から園を守る・子どもを守る」(メイト、1944円)など。