子ども食堂、学習支援… 埼玉の子の居場所、1年で323カ所に倍増 県が積極支援

飯田樹与、大西隆 (2019年11月30日付 東京新聞朝刊)
 埼玉県内の子どもの居場所が今年8月末時点で323カ所に上り、1年前からほぼ倍増していることが、県への取材で明らかになった。無料ないし低料金で食事を提供する子ども食堂をはじめ、勉強を手伝う学習支援教室や自由に遊ぶことができるプレーパークなどを指す。地域の子どもを見守る機運が高まる一方、それを後押しする県の仕組みが原動力となって相乗効果を生んでいるとみられる。

食事を楽しむ子どもたち=10月、埼玉県川口市で(川口こども食堂提供)

子どもの貧困対策と、高齢化する地域の再生志向と

 埼玉県の子どもの居場所実態調査を活動別(重複あり)に見ると、子ども食堂213カ所(前年比90カ所増)、学習支援63カ所(同27カ所増)、プレーパーク27カ所(同14カ所増)、不登校の子どもや子育て中のママの居場所、多世代交流拠点などその他は86カ所(同52カ所増)だった。

 地域の急速な高齢化を背景に、子どもを対象とする取り組みにとどまらず、世代を超えて交流できる場が著しく増えている実態も鮮明となった。子どもの貧困対策という色彩を残しながらの地域再生志向が強まっているとの見方もある。

「実践のハードルが低く、潜在的な思いに応えやすい」

 県内の全63市町村のうち、子どもの居場所が運営されているのは1年間で8市町増え、55市町に広がった。越生、皆野、長瀞、小鹿野、美里、上里、寄居、東秩父の8町村では1カ所も確認されなかった。

 子どもの居場所が多様化しながら増加する現状について、県福祉部の内田貴之企画幹は「居場所づくりは大学生や会社員、主婦など、誰でも取り組めるというハードルの低さがある。『子どものために何かやりたい』という潜在的な思いに応えやすいのでは」と説明する。

県も「ヒト、モノ、カネ、バショ」のマッチング後押し

 地域の社会貢献への思いを実践につなげる仕組みを、県は構築してきた。

 貧困家庭の子どもが大人になってから再び貧困に陥る連鎖の解消に向けて、個人や企業、団体が縦横に協同する「こども応援ネットワーク埼玉」を立ち上げた。居場所づくりに欠かせない地域の「ヒト、モノ、カネ、バショ」のマッチングに力を入れる。居場所の開設や運営のノウハウを実践者や専門家が伝える「こどもの居場所アドバイザー」の無償派遣も開始した。

 通夜が営まれない友引前日の施設を有効に利用したい葬儀会社と、子ども食堂の開催場所を探していた市民ボランティアをつないだ例もある。「意外な組み合わせから新しいモデルが生まれ、それを県が発信すると反応がある。地域には豊富な資源がある。どうやって動機づけをするかが一番大事」と内田企画幹。

 「子どもが一人で安心して来られる場」として、県は小学校区に1カ所を目安に計800カ所の居場所づくりを支援したい考えだ。県内の子ども食堂およそ100団体でつくる「埼玉県子ども食堂ネットワーク」の本間香代表(59)は、食材提供や助成事業の情報の迅速かつ平等な発信の重要性を指摘。その上で「隣の食堂と仲良くし、地域に愛される食堂にすることが大切だ」と、相互の信頼と協力を訴える。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年11月30日