新型コロナから「子どもの心」を守るため、保護者が気をつけたいこと WHOのメッセージを日本のデザイナーたちが”翻訳”

 首都圏などに緊急事態宣言が出され、家庭内の不安やストレスも高まっています。休校の延長で「新学期になったら行ける」と思っていた学校に行けなくなったり、社会の重い雰囲気を敏感に感じ取ったりして子どもたちも不安定になりがちです。世界保健機関(WHO)が子どもの心を守るために全世界の保護者向けにて出したアドバイスを分かりやすく伝えようと、東京都内のデザイナーなどでつくるグループが今月発信した記事を紹介します。

子どもの年代ごとに 行動と言葉を具体的に提示

 記事のタイトルは「新型コロナウイルスから子どもの心を守る。WHOから世界中の保護者たちへ。」 WHOが公開している文書を翻訳し、意図が伝わりやすいよう言葉を補うなどし、温かい雰囲気のイラストも添えて編集しています。(この記事で使わせていただいているイラストです)

 「1対1の時間」「肯定的でいましょう」「新型コロナウイルスについて話をする」など6つの項目があり、例えば「1対1の時間」では、赤ちゃんから3歳児くらいまで、幼児から小学生くらいの年頃、思春期の子など、年代ごとにどんなことをしたらいいか、具体的に提示。子どもたちが家で過ごす時間が増えるこの時期を絶好の機会ととらえるよう提案し、「一緒に時間を過ごす間は、テレビや携帯の電源を切り、ウイルスのことを忘れる時間を作りましょう」と呼びかけています。

肯定的な声掛け 現実的な目標 正直さと率直さ

 「肯定的でいましょう」の項目では、子どもに対して、「散らかさないで!」ではなく「服はちゃんとしまってほしいな」と伝えるなど、親に肯定的な言葉を使うことを勧めます。また、「子どもにお願いしていることは、本当にできることですか?」と問いかけ、例えば子どもが家の中で一日中静かにしていることは難しいけれど、「15分だけなら静かにできるかもしれません」と、現実的な目標で子どもと接するようアドバイスしています。思春期の子どもには、SNSで友達と交流することなど、親とは距離を置ける場所を探してあげることも勧めています。

 新型コロナウイルスについて、話題にすることを避けたりせず、子どもとしっかり話すことの大切さも指摘しています。「正直さと率直さが子どもを守ります。子どもはどのくらい理解できるのか考えてください」と、年齢に応じて伝える内容を親自身が考えることが大切だ、としています。その上で、怖いと感じていたり混乱していたりする子どもに「いつでもそばにいる」と伝えるようアドバイスしています。

医療関係者、デザイナー、翻訳業など15人で作成

 記事を企画制作した東京都台東区のデザイナー、カワセタケヒロさん(34)は、学生時代、国際NGOで医学や公衆衛生のテーマに取り組んでいたことで、今も医療に従事する友人、知人が多いそう。新型コロナの感染が広がる中、小児科医など子どもの心の健康にかかわる医療者の間で、社会不安が高まることでDV(家庭内の暴力)の増加などを心配する声が高まっており、「WHOの発信を日本でも早めに広く伝える必要がある」という話を聞いたカワセさんは、自分たちのような伝えることを仕事としている人たちの力を生かして発信することを企画したそうです。

カワセタケヒロさん

 記事の作成には、医師のほか、デザイナーやエンジニアなど15人が参加。企画を立ち上げてから数日で、完成させました。「ストレスがかかっている状態に置かれると、人の認知能力は下がる。見た目のかっこよさよりも、大事な情報が簡単に把握してもらえるようかみ砕いた表現を用い、シンプルに作ることを心がけた」とカワセさん。「必要としている人は多いと思う。多くの人に届いてほしい」と話しています。

 カワセさんたちは今後、外国人を含め日本で暮らすさまざまな立場の人に向けた情報提供に取り組んでいく予定だということです。

コメント

  • 今更ですが、とても参考になりました。 大人ですら、この状況の中ではストレスがMAXになります。ましてや子どもの心はと思うといわんやをやです。 兎に角、寄り添って肯定しつつ、話さなければいけないこと