お金の勉強は社会の仕組みを学ぶこと 親子で始めてみませんか〈どんぶり一家のマネー術〉

(2020年5月1日付 東京新聞朝刊)

 主婦の財子(ざいこ)さん(39)と会社員の夫の経男(つねお)さん(42)、長男税太(ぜいた)くん(4つ)、長女貨保(かほ)ちゃん(0歳)のどんぶり家。一家のお金の悩みにFP陽子さんが助言するコーナーです。第1金曜日掲載。

「金融リテラシー」が足りない日本の子どもたち

 財子 前回、おこづかいのやりくりを通してお金について学ぶ、という話が出ました。日本では「お金の教育」ってあまりされていませんよね。

 陽子 日本では学校教育で積極的に教えていませんが、私が10数年前に見学したオーストラリアの小学校では、社会科で起業家教育と金融リテラシーを熱心に教えていました。金融リテラシーとは、家計管理や生活設計をしたり、金融経済を理解したりする力。金融教育の普及を目指す金融広報中央委員会(事務局・日本銀行内)の調査では、日本は欧米に比べてお金に関する知識を問う問題への正答率が低いのが現状です。


〈前回はこちら〉おこづかいは「4つのお金」に分類して管理させましょう


電子マネーも現金と同じく「金額のルール」を

 財子 最近の子どもは、初めて使うお金が「小児用PASMO(パスモ)」などの電子マネーということも。ピッとタッチするだけだと、お金を使っているという意識が持ちにくそうです。

 陽子 チャージされた電子マネーも現金と同じように、何にいくら必要なのか親子で話し合ったり、使える金額のルールを作ることが大切です。履歴も一緒にチェックするのが良いでしょう。

2022年度から成人 18、19歳の「被害」に注意

 財子 子どもたちがもう少し大きくなったら、ネットゲームの課金なども心配です。

 陽子 よくあるのは、登録されている親のクレジットカード番号を使って、勝手に子どもが課金をしていた、というトラブル。課金の仕組みやひも付けている銀行口座やクレジットカードについても、年齢に応じて注意点を説明しましょう。2022年4月からは、成人年齢が18歳に引き下げられ、未成年者という理由で守られていた18、19歳の消費者被害が増えることが懸念されています。この年齢になると、高額の商品を契約したりするネット取引の被害が目立つので、大きなトラブルに遭う前に、家庭で話し合ってほしいです。

店や銀行を開ける「こどものまち」参加もおすすめ

 財子 先生おすすめの、お金の教育があれば知りたいです。

 陽子 子ども向けの本を親子で読んでみては。私もかかわった本に「10歳から知っておきたいお金の心得」(えほんの杜)があります。お金の勉強は、社会の仕組みを学ぶこと。子どもだけで小さなまちを運営するドイツ発祥の催し「こどものまち」に参加するのも手です。店や銀行を開いたり、お金のやりとりもするので、楽しく学べると思いますよ。

監修・八木陽子

 東京都在住。1男1女の母。出版社勤務をへて独立。2001年、ファイナンシャルプランナーの資格を取得後、マネー記事の執筆やプロデュース、セミナーなどの仕事をする。2005年、親子でお金と仕事を学ぶ団体「キッズ・マネー・ステーション」を設立。2008年、家計やキャリアに関する相談業務を行う「株式会社イー・カンパニー」を設立した。著書に「6歳からのお金入門」(ダイヤモンド社)、「10歳から知っておきたいお金の心得」(えほんの杜)など。

※「どんぶり一家のマネー術」は毎月第1金曜に掲載します。次回の掲載は6月5日です。