さいたま市に赤ちゃん歓迎の絵本屋さん 泣いても本が汚れても大丈夫 パパになった薬剤師が一念発起し転身
子連れで焦り、気まずさ…「もっと気兼ねなく過ごせる本屋があったらいいな」
2017年9月に長男が誕生。「育児をしてみて、初めて子どもが好きだと気づいた」という内田さん。当時、手に職をと目指した薬剤師の仕事にやりがいが見いだせずにいた。「このまま続けて、子どもに堂々と向き合える父親になれるのか」と自問した。
もっと子どもに関われる仕事がしたい。ふと浮かんだのは、子連れで出掛けた書店での体験だった。生後半年だった長男が泣きだし、早く買って出なければと、内容を吟味する間もなく「一番人気」と書かれた絵本を手に取り、レジへ急いだ。歩くようになった長男が買うつもりのない商品を触ってしまい、気まずい思いをしたこともあった。
「子どもと気兼ねなく過ごせる本屋があったらいいな」を形にしようと、書店や図書館を巡って絵本を知ることから始めた。ただ、知り合った書店の店主からは「3年くらい店で働いてみたら」とアドバイスされることがほとんど。「子どもの成長は待ってくれない」と、昨年5月に勤めていた薬局を退職し、その7カ月後の昨年12月には店のオープンにこぎつけた。
飲食OK、おもちゃもベビールームもあります 本のチョイスは「自己肯定感」
じゅうたん敷きの店内に、子どもがつかまり立ちできる高さの本棚を設置。利用者は自由に絵本を読み、気に入った作品は購入できる。店内には木のおもちゃをたくさん並べ、内田さんが来店した子どもと一緒に遊ぶこともある。おやつやジュースなど飲食OK。おむつ替えや授乳ができるベビールームもある。
並べる絵本は、子どもが自分を好きになれる「自己肯定感」を高めてくれる物語たち。お気に入りは「わたしとなかよし」(ナンシー・カールソン著)。豚の女の子「わたし」が、わたしのために本を読んであげたり、ごはんをもりもり食べたり…。自分自身を大事にすることの大切さを伝えている。
読んだ物語は、子どもの中に蓄積され、考えるときの軸となる。古典的な作品の中には、主人公が困難や課題を乗り越えていくという解決型の物語が多いことが気になっていた。「頑張った自分じゃなくても、ありのままの自分を好きになろうというエッセンスを届けたい」。夫婦で、長男の育児の方針を悩みながら、たどり着いた思いを込める。
絵本屋CUBE
「絵本屋CUBE」は料金1時間1人250円。延長料金あり。月、金曜定休。絵本はオンラインでも購入できる。6~9日には人気作「トイレロケット」(はっとりひろき著)の原画展を開く。午前10時~午後4時、入場は無料で誰でも可。電話=048(708)1381。店主の内田明宏さんは長野市出身。2018年11月にさいたま市へ移住した。