〈えほん〉「にじいろのせかい」著・刀根里衣

長壁綾子 (2021年1月15日付 東京新聞朝刊)

(長壁綾子撮影)

 悲しいことがたくさん起きて、世界は色を失った。絵描きの少年は「この世界に小さな光をともすんだ」と考えた。

 少年は筆とパレットを手にし、大地に咲く花たちに、色をつけた。すると、そよ風が少年の思いを運び、こぼれた絵の具が闇を洗い流す。植物や動物に色をつけ、月や星を描く少年。色彩で命を吹き込まれたものたちは、徐々に光を放ち、世界は虹色に輝きはじめる。

 今まで経験したことのない困難を前に立ちつくす私たちに、希望を与えてくれる物語。一日も早く世界が彩りを戻せることを願って。

 1650円。NHK出版=電話0570(009)321。