写真を嫌がり白目むく、これも成長〈お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉

(2021年3月5日付 東京新聞朝刊)

 2度目の緊急事態宣言。と言われても、1回目より緊張感がないのが本音。そうは言っても、どこかの政治家と違って、小市民の僕は、さすがに外に飲みにいくのは、はばかられる毎日です。

 「家で子どもとだけ話してたら、なんかオモロない人間になりそうやわ」と妻に言うと、「もともとそんなオモロないで」と言われた。

 そんな面白くない僕のことはさておき、最近、写真を撮ろうとすると、三男は白目をむき、長男は撮られるのを嫌がるようになった。前から長男にその予兆はあったけど、近頃では、カメラを向けるとソッポを向く。

 たまたまうまく撮れても、「今のは新聞に出さないでよ」と言ってきたりする。「農家の子が田植え手伝うのと一緒や」と丸め込もうとしても、「じゃ、撮ってもいいけど、今晩スシローだよ」とセコく交換条件を出してくる。

 これも健全な成長だと諦めよう。逆にノリノリで写られても、それはそれで気持ち悪いのかもしれない。

 そんな折、図工の時間に使うため、長男のクラスの誰かが持ってきた新聞が、たまたまこの連載記事の載った東京新聞だったらしい。

 「おれの兄弟が写ってるってみんな驚いて、先生も読んでたよ」。夕食時、照れくさそうに話す長男の様子が、まんざらでもなさそうだったので少し安心した。

 とりあえず、もうちょっとの間は撮らせてもらえそうです。また、スシローに連れて行こうと思います。

加瀬健太郎(かせ・けんたろう)

 写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(リトルモア)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。10歳、7歳、3歳、0歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。