川崎市が医療的ケア児向けの災害訓練 停電時は電動車で医療機器を充電できる

渡部穣 (2022年11月12日付 東京新聞朝刊)

医療機器の充電について説明を受ける医療的ケア児と母親=いずれも川崎区の市総合リハビリテーション推進センターで

 地震など災害発生時の停電に備え、川崎市は11日、電動車を活用し、医療的ケア児の人工呼吸器など医療機器への給電の実証実験を、川崎区日進町の市総合リハビリテーション推進センターで行った。三菱自動車とトヨタ自動車、系列販売店などが協力。医療的ケア児とその保護者らも体験し、利用しやすくするための改善策を出し合った。

電動車「使えそう」 課題も見えた

 給電訓練では、電動車の車内のコンセントに普段通り、差し込むだけ。保護者からは「これならいざという時に使えそう」という安心の声が上がる一方、「そもそもどうやってセンターまで避難するかも考えないといけない」として、電動車が自宅まで来てくれないかと要望する声もあった。

 幸区の森田成南(せな)ちゃん(2つ)は、人工呼吸器や加温加湿器、パルスオキシメーターなど5種類の医療機器が必要。全ての充電が必要となり、保護者の晃将さん(37)、智子さん(39)夫妻は「基本的には自宅で持ちこたえられるように蓄電池などで備えたい」と話す。機器によっては、電動車から内蔵バッテリーに充電すると、動作に影響を与える恐れがあることも分かった。

医療機器への影響を心配し、電動車から充電するかどうかを話し合う保護者(右)ら

段差があり車いすを乗せられない

 中原区の吉原壮眞(そうま)さん(8つ)の場合、車いすを含めた重さが約50キロ。母親の純代さん(44)は「実際に充電を体験してみて電動車が欲しいとも思ったが、車の段差が高過ぎて、息子の車いすは乗せられない。福祉車両の電動車があるとうれしいと要望した」と話した。

 星野沙帆(さほ)さん(7つ)の場合は、蓄電池に簡単に充電できることが分かった。母親の菜緒(なお)さん(37)は「これならいざというとき使える」と安心した様子。「実際に体験させてもらえて良かった」と笑顔だった。

 川崎市の土谷豊・危機管理担当課長は「いろいろな要望が出たので、今後の参考にさせていただき、改善させていきたい」と話していた。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年11月12日