医療的ケア児の保育施設が足りない 支援法が施行されても…背景には看護師不足

五十住和樹 (2022年5月6日付 東京新聞朝刊)
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介助を受けておやつを食べる医療的ケア児たち。子どもに合わせたケアと保育が必要だ=静岡県磐田市で

 人工呼吸器や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な「医療的ケア児」。受け入れる保育所や幼稚園は増えているが、看護師不足などにより、大部分が通えない実態は変わっていない。そうした子どもたちと家族を支えるための「医療的ケア児支援法」が昨年9月に施行。ケアを担う人材の確保など、国や自治体による支援の拡充に期待がかかっている。 

「子どもが楽しく通うと生活も安定」

 「さあ、おやつにしましょう」。3月中旬の午後、静岡県磐田市の児童発達支援事業所「かるみあ富丘」を訪ねると、男児(1つ)と女児(3つ)がいすに座り、保育士らの介助を受けながら、おかかおにぎりを頬張っていた。2人とも日常的にたんの吸引が必要な医療的ケア児。男児は、体外からチューブで消化管に栄養を送る経管栄養をやめて日が浅いため、医療専門職の看護師が介助を担当していた。

 この事業所は、社会福祉法人「聖隷福祉事業団」(浜松市)が2020年4月に開設した複合施設の一角だ。廊下でつながる幼保連携型認定こども園「聖隷こども園こうのとり富丘」とは園庭も共有し、コロナ禍前は日常的な交流を通して、障害のある子どもと健常児が学び合う統合教育を実践してきた。同園長の永島弘美さん(64)は「医療的ケア児の脱げた靴下に気付いた園児がはかせてあげるなど自然に思いやりが育つ」と意義を説明する。

 自宅で付きっきりで看護をする保護者の負担は大きく、医療的ケア児を預かる施設は貴重だ。聖隷福祉事業団で県内の障害福祉事業を統括する公認心理師で保育士の井上佳子さん(43)は「保育所を探し歩いて断られ続け、泣きながら来た母親も。子どもが楽しく通うようになると家族の生活も安定する」と話す。自分の時間を持つことを諦めていた母親が多いが、2021年度は在籍児の母親3人が新たに就労したという。

安全確保のため、個人に合わせた対応

 聖隷福祉事業団は十数年前から、運営する保育所で経管栄養が必要な子どもを受け入れてきた。こども園などにも看護師を配置し、先月からは県内外の3つの保育所・こども園で医療的ケア児を受け入れている。

 かるみあ富丘の利用者は定員10人のうち今年3月までは7人、先月からは5人が医療的ケア児。看護師は5人おり、併設の訪問看護ステーションの応援も受ける手厚い態勢だ。

 それでも、一人一人の体の状態が異なる医療的ケア児の保育中の安全確保は大きな課題。飲み込みやすいように食べ物や飲み物のとろみの濃度を調節するなど、食事も個人に合わせて作る調理師の専門性も求められる。

医療的ケア児の受け入れ状況の推移

国や自治体の「責務」 意識も変化

 厚生労働省によると、医療的ケア児を受け入れる保育所などは2020年度、526施設となり、5年前の2倍に増加。受け入れ人数も645人と倍増した。一方、同省の委託調査による全市区町村対象のアンケートでは、回答した870自治体の約7割が「医療的ケアができる看護師を確保できない」と答えた。看護師不足を背景に、経営的にも確保は難しいのが現状だ。

 支援法の整備に尽力してきた全国医療的ケア児者支援協議会(東京)の森下倫朗さん(41)は「法律に国や自治体が医療的ケア児と家族を支援する『責務』という重い言葉が入り、自治体の意識が変化してきた」と指摘。「医療的ケア児にはオーダーメードの保育が必要。看護師不足に対応するためにも、一定の訓練を受けた保育士が医療的ケアを担える環境を整えていくべきだ」と訴える。

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