「想像力はいいものでも悪いものでもない」ヨシタケシンスケさんの意外な言葉の意味は
長壁綾子 (2023年4月21日付 東京新聞朝刊)
悪い方へ…傷ついたり攻撃したり
人気絵本作家のヨシタケシンスケさん(49)が今月、デビュー10周年を迎えました。作品の魅力の一つは、よくある日常のちょっとしたことを、あふれる想像力で、愉快で壮大な物語に発展させていくところです。
取材時、この「想像力」について尋ねました。「どうすれば子どもの想像力を伸ばせるのか」とよく聞かれるというヨシタケさんは、「想像力は、いいものでも悪いものでもない」と話します。
想像力を使って悪い方へ考えてしまい、落ち込んで傷つくこともあれば、相手への攻撃につながることもある。逆に、与える影響すべては考慮しないからこそ重要な判断を迅速に下すことができ、結果を残すリーダーもいる。
どこに向ければ、楽しくなるのか
ヨシタケさん自身、心配性で怖がりだったり、人と打ち解けられなかったりと、自分の持っている「想像力」を良い方向に使えなかったのだとか。だからこそ「想像力」をプラスの方向に使い、「自分にとって『楽しい』って何だろう」という部分から組み立てていった。そうしてできたのが、デビュー当初から継続して刊行してきた「発想絵本」だったそうです。
「僕は常に面白いことが思い浮かんで仕方がないというわけではないんです。死に物狂いで想像力をいい方向に使おうとしていったのが、僕の仕事になっている」と伝えてくれました。
「想像力というのは、あくまで力の一つ。どこに向ければ、自分もみんなも楽しくなるんだろうかと考えることが、一番大事」。そう話すヨシタケさんの言葉が、私の胸にずっと残っています。
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