キッザニアに「介護の仕事」体験コーナー 出前授業も各地で 人手不足だが…知ってもらえば「あこがれの職業に」

五十住和樹 (2023年8月25日付 東京新聞朝刊)

指導役の女性に教えられ、車いすに移した高齢女性の人形に帽子をかぶせるなどする小学生たち=キッザニア東京で

 子どもたちに介護の仕事を身近に感じてもらう取り組みが、民間でも自治体でも進んでいる。多彩な仕事をリアルに体験できる「キッザニア東京」(東京都江東区)には7月、介護のコーナーが登場。各地の小中学校などでも介護職員による「出前授業」が行われている。若い親子には介護が身近でなく「知ってもらえば関心も高まるはず」と、危機的な人手不足にある介護現場の期待は大きい。

介護のイメージ「きつい」→「価値ある」に

 「相手の立場で考えてね」。指導役の女性の手助けを受け、高齢女性の人形をベッドから起こして車いすに乗せる小学生たちは緊張気味だ。夏休みでにぎわうキッザニア東京の「ケアサポートセンター」。介護福祉士になりきって介護の仕事を体験していた。

 重りやベルトを着けて腰の曲がった高齢者の状態も経験。実際に車いすを押したほか、施設で入居者が就寝中かベッドを離れているかなどの状況を画面に表示する情報通信技術(ICT)の説明も受けた。約30分の「就労」を終え、小学4年の古山愛子さん(10)は「体を起こすのは大変でした」。同学年の中野翔太さん(9)は「本物のお年寄りの介護もやってみたい」と前向きだった。

 出展したのは介護大手のSOMPOケア(東京都品川区)。介護のイメージを「きつい仕事」から「価値ある仕事」に変えることが狙いという。現場を統括する部長の薄(うすき)一臣さん(50)は「お年寄りの『ありがとう』の言葉に感動できる職場。子どもたちのあこがれの職業にしたい」と意気込む。

介護福祉士が出前授業 魅力を伝えたい

 認知症グループホームなどを運営する学研グループのメディカル・ケア・サービス(さいたま市)は、昨年12月から、小中高校や専門学校に経験豊富な介護福祉士を派遣する無料の出前授業を始めた。認知症を正しく理解してもらうのが主な狙いだが、講師の介護福祉士杉本浩司さん(46)は「介護が魅力ある仕事と知ってもらう」のも目的と説明する。

 これまで実施した9校では、徘徊(はいかい)などの認知症の症状が適切な専門的ケアで改善した事例に感嘆の声が上がった。「介護の仕事は面白い」という感想もあったという。受講後のアンケートでは介護職への興味関心が大幅に増えた。杉本さんは「介護は閉じられた世界で想像ができない。見てもらえば、利用者の人生を豊かにできる仕事だと分かる」と手応えを話す。

人材不足が深刻化 賃金アップが不可欠

 自治体も国が2014年度に設けた基金を活用した職場体験やイベント開催など若年層へのアピールに懸命だ。名古屋市は2021年度から、中学校へ介護職員を派遣する「出前講座」を開いて仕事内容ややりがいを伝えている。

 厚生労働省によると、2019年度の介護職員数は約211万人。団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年度には約280万人が必要とされる。だが、介護福祉士養成施設と入学者数は減少を続け、2008年度の434施設、1万1638人から、2022年度は356施設、7679人に減った。

 介護人材に詳しい淑徳大総合福祉学部の結城康博教授(53)は「介護について親子に意識してもらう取り組みは意味がある」と言う。一方で、深刻化する現在の人材不足に対しては、全産業平均までの賃金引き上げが不可欠と指摘。「事業者には入職してきた若者を育て、定着させる力がまだ足りない。休みが取りやすい労働環境をつくるのも重要だ」と話している。