「子どもたちのサンタになって」困窮世帯にクリスマスプレゼントを 世田谷の住民有志が寄付募集中

(2023年11月23日付 東京新聞朝刊)

サンタの格好で街を練り歩きながら寄付を呼びかける参加者=2022年、せたがやサンタプロジェクト提供

 クリスマスまで1カ月。物価高が家計を苦しめる中、経済的な理由でプレゼントを用意できない困窮世帯の子どもたちに図書カードなどを贈ろうと、東京都世田谷区の住民ら有志による「せたがやサンタプロジェクト」が寄付を募っている。12月3日には東急世田谷線の1編成2車両を貸し切り、サンタクロースの衣装で乗るチャリティーイベントを企画。有志らは「子どもたちのサンタになって」と協力を呼びかけている。

図書カードを380人の子どもたちに 

 サンタプロジェクトは、困窮世帯に食料品などを無償で配布するフードパントリーに取り組む「せたがやこどもフードパントリー」に関わっていた区内在住の社会福祉士鈴木佑輔さん(43)が新型コロナウイルス禍の2020年秋に発案。同年末から子どもたちにクリスマスプレゼントを届けようと続けてきた。利用者からは「子どもが欲しがっていたプレゼントを渡せて良かった」などの声が寄せられてきた。

 「せっかくなら支援する側も楽しく」がコンセプト。今回のチャリティーイベントは「三茶(さんちゃ)にサンタがやってくる」と銘打ち、サンタ姿で貸し切り電車に乗って車窓から手を振ったり、三軒茶屋駅周辺を練り歩いたりして街の人と交流しながら寄付を集める。

 イベント経費を除く参加料と集まった寄付などを原資に、今年はフードパントリーに登録している約210世帯、約380人の子どもに2000円分の図書カードとして配布する予定だ。

東急世田谷線をバックに「せたがやサンタプロジェクト」について話す鈴木佑輔さん(左)ら=東京都世田谷区で

世田谷区が推計 「生活困難層」の子どもは1万2000人

 せたがやこどもフードパントリーが活動を始めたのもコロナ禍の2020年4月。現在は原則月1回、区内4カ所で困窮家庭を対象に、米や野菜、菓子などを無償で配布している。

<フードパントリー> 経済的困窮などで日々の食品の入手が困難な人が、必要な時に食品を受け取れる場所。提供する食品は主に企業や個人からの寄付品で、設置者によって配布対象や頻度などは異なる。農林水産省によると、消費などの過程で発生する未利用食品を必要としている施設や人に提供する取り組みを「フードバンク」と呼び、広義にはフードパントリーも含む。日本初のフードバンク「セカンドハーベスト・ジャパン」(東京)が2016年以降に設置支援したフードパントリーは東京、神奈川、埼玉の3都県で計200カ所(2021年末)に上る。

 世田谷区の子どもの生活実態調査(2018年度)では、低所得や子どもの体験などが経済的な理由でできない「生活困難層」の子どもの割合は小学5年生で11.7%、中学2年生で13.9%で、区内全体では17歳以下の約1万2000人と推計している。この1年ほどは物価高が家計を直撃し、状況はさらに悪化しているとみられる。登録世帯の約7割がひとり親で「電気とガスが止まった」などと切実な声が届く。

 フードパントリーを運営する実行委員会の津田知子共同代表(47)は「生活に困っていることを知られたくないと、支援につながらない人はまだいる。一見して困窮状態が分からない人が多く、問題に気づきにくい」と訴える。

12月3日「三茶にサンタがやってくる」

 チャリティーイベントは12月3日午後1~4時、先着70人。参加費は乗車料込み2000円(サンタの衣装は各自で用意)。未使用のおもちゃなどを提供する「世田谷プレゼントバンク」は12月10日まで受け付ける。申し込みや寄付の振込先などは「せたがやサンタプロジェクト」のホームページへ。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年11月23日